2024.08.16
就労について
メンタルヘルスケア<産業医>とは?
近年、うつ病などの精神疾患を抱える社員が、企業においても増加している傾向にあります。しかし、自身の不調を職場の上司などに伝えにくいこと、仕事を休みづらいなどの問題が社員を悩ませることもあるでしょう。また、職場ではパフォーマンスの向上が求められる場合も多く、ある意味では精神疾患に陥りやすい環境が多いとも言えます。そこで、頼りになる存在が「産業医」です。
ここでは、産業医の特徴やメンタルヘルスケアにどのように役立ってくれるのかについて、ご紹介します。
精神疾患が原因で、自殺・労災請求する社員はめずらしくない
平成25年に警察庁が行った自殺調査において、職場の勤務問題がもととなり自殺した人数は、自殺原因が特定できている20,256人のうち2,323人という結果だったというデータが示されています。また、精神疾患を理由とする労災の請求件数も、1,409件におよんでいることが分かっています。一方、脳や心疾患を理由とする労災請求は、784件と半分程度になっているのです。つまり、精神疾患を抱える社員が、それだけ増えているということが理解できます。
上記の結果から、精神疾患を始めとするメンタルヘルスの問題は、会社内だけで解決するのは難しいと言えるでしょう。そのためには、専門的な立場から助言や指導ができる人材が、必要とされているということがうかがえます。
産業医は会社におけるどのような存在?
「産業医」とは、社員の健康管理についての助言や指導、相談を行う医師のことです。産業医は、会社に在籍する医師で、法律による設置義務は必要としませんが、設置要件は以下のように定められています。
1人~49人までの社員が在籍する会社
産業医の選任義務はありません。
50人~999人までの社員が在籍する会社
嘱託可能な1名以上の産業医の選任義務があるとされています。
1000人~3000人までの社員が在籍する会社
専属で1名以上の産業医の選任義務があります。
3001人以上の社員が在籍する会社
専属で2名以上の産業医の選任義務があります。
上記の定めは、あくまでも原則的な傾向ですが、会社員が49人までの規模の会社でも産業医が在籍しているケースもありますし、会社側がそれを要請することも可能です。しかし、設置義務がないゆえに社員が少ない会社になればなるほど、産業医がいない確率は高くなってしまうでしょう。
産業医の主な役割について
いずれにしろ、産業医は社員のメンタルヘルスを守る砦になることが少なくありません。まず、産業医の役目は社員の健康診断などの結果をもとに、社員の病状の把握、診断を行い、必要なアドバイスを与えることです。そして、社員の状態によっては、産業医による面談を行うこともあります。その際に、社員の相談にのり、適切な助言を与えるとともに、場合によっては、就労制限や就労不可の判定がなされることもあり得ます。
また、平成27年から社員を50人以上抱えている会社は、最低1年に1回のストレスチェックテストを行うよう、制度が定められました。産業医は、ストレスチェックで、高ストレス状態が出た社員への面接指導をするという働きも担っています。
一方、産業医は現在会社で働いている社員だけに、アプローチするわけではありません。メンタルの不調で休職している社員に対する職場復帰の可否や相談にのることも大切な仕事です。産業医なら、社員が在籍していた部署の仕事量や流れ、特徴などをしっかりと把握したうえで、休職中の社員がどの程度回復したら復職の見込みが立つかという視点で物事を考えることができます。それにより、病気の再発の防止や正しい健康管理について、社員も学ぶことが可能です。
さらに、産業医は休職までには至っていない、メンタルに不調を抱えている社員の就業内容などに関して会社側に提案を行うこともあります。職場巡視や上司・人事スタッフなどに対する、メンタルヘルス教育の実施にも力をいれる必要があります。
精神疾患の疑いがあるなら、産業医に相談を
産業医は、会社に在籍はしていますが、上司でも同僚でもない中立的な存在だと言えます。また、専門知識をもとに客観的な判断をしてくれますので、相談をしやすい立場でもあることでしょう。
そのため、メンタルの不調によって業務に支障が出ているけれど、その見直しを部署内で言い出す勇気がない。休職したいけれど、どういう流れが良いのか分からないなどといった方は、産業医とまずは面談をしてみることをおすすめします。産業医との面談は自分からは希望できないと思っている方が多いかもしれませんが、産業医との面談の条件は以下のようになっていますので、安心して行動を進めてくださいね。
- 会社で行った健康診断で異常が見られたとき
- ストレスチェックテストで、高ストレス状態が認められたとき
- 病気などで、社員が休職をするべきかどうかの判定を行うとき
- 休職している社員が、復職をできるかどうかの判断をするとき
- 社員が過剰な長時間労働をしていることが分かったとき
- 社員が面談を希望したとき
産業医面談においては、産業医は個人ひとりひとりの状態によって、仕事内容や休養についての適切な指導や助言などをしてもらえます。また、必要に応じて上司や人事部などとも連携しながら動いてくれるので、社員自身が自分ひとりだけで頑張ったり、我慢をしたりすることも減るでしょう。
このように、産業医によるきめ細やかな第三者のサポートがあれば、社員の不調を長時間放置することが少なくなります。その結果、重篤な精神疾患などの状態になるのを防いでくれることにつながります。
まとめ
機能性や利便性を重視する現代社会では、私たちが快適に生活できるシーンが増えたことは事実です。しかし、会社で働く社員にとっては、それだけ業務を効率良くこなし、結果に結びつけなければならないというプレッシャーを生んでいます。そのような毎日が続くと、社員のメンタルに不調が生じ、精神疾患に陥ることも少なくないのです。
「最近眠りにくい」「帰宅後は何もする気が起きないほど疲れる」「ゆううつな気分から抜け出せない」などの症状が現れたら、メンタルの不調のサインだということに気づき、早めに産業医を頼ることが大切だと言えます。
[参考URL]
平成26年度地域・職域連携推進事業関係者会議 職場におけるメンタルヘルス対策の推進について
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