2024.01.05

退職について

退職勧奨を受けた時の退職届の書き方、例文付きで紹介

退職願、退職届、そして辞表の意味は?

退職願と退職届、辞表というものは、日常的にはあまり縁のない存在です。学校で教えてくれることもありません。多くの人は、いざ転職等となったタイミングになって初めて知るのではないでしょうか。しかしそこでよく調べずに提出してしまうと、自分の思った流れとは変わってしまうこともありえます。予想外の展開になって後悔しないよう、ここでは退職する時に自分の退職の意思表示をするための書類について紹介します。

いざ退職しようと思ったら

会社を辞めようと思った時は、まず上司へ伝えなければいけません。その際に提出すべき書類が「退職願」です。ただ、似たような言葉で、「退職届」や「辞表」なんてものも存在します。よくドラマで辞表を叩きつけたりするシーンがありますよね。全て仕事を辞めるという趣旨のものではありますが、意味合いがそれぞれ異なります。自分が辞める時にはどれを使えばいいのか分かるでしょうか。勘違いして使ってしまうことのないよう、それぞれの違いを覚えておきましょう。

① 退職願

退職願とは「提出後に撤回可能なもの」な届け出です。つまり、慰留や条件交渉等で翻意する可能性がある場合は、その余地を残して退職願を提出する、という方法を取ります。表現としては「○月×日に退職させていただきたいと思います」という書き方をします。これは、自分の意思で撤回の余地がある表現です。勤務先が退職願を受理し、労働契約解除の検討に入り、最終的に退職を認めた時点で確定することになります。

ちなみに、退職願の提出は必ずしも必須ではありません。勤務先への伝達は口頭で行っても構わないのです。法律では退職の意思表示に際して書面での提出を規定しているわけではないため、明確な意思表示があれば必ずしも書面で提出する必要はありません。ただ、退職の意思の伝達を勤務先に対して確実に行うという点、さらに申し出を行った証拠として「言った」「言わない」などのトラブルを避けるという点でも書面での提出が望ましいとされています。

また、退職願のニュアンスとしては、文字通り「退職をお願いする」ということになります。退職したいという意思を伝えるものなので、退職願を提出した後に会社との話し合いが行われるのが一般的です。つまり、会社との合意があって初めて退職が認められるものです。そのため、平社員の立場で円満退職をするためには、まずは退職願を提出するのが良いでしょう。

② 退職届

退職届とは、退職するという決定事項を通達するためのものです。勤務先への提出後は退職することを撤回できないものなので、強い辞意を示す際に用いるものです。退職届は退職願と違って退職が決定している時に提出するものなので、退職時期などの相談にも、引き留めの相談にも一切応じないという姿勢と言えるでしょう。一般的には退職が決まった後、正式に「退職」することを届け出る書面、いわば事務手続きの記録として提出します。退職届には会社規定の書式があればそれを用いますが、特にない場合はインターネットで検索すると見本が出てきますよ。

なお、民法(627条1項)では、退職を申し出てから2週間(正式には14日を経過した後の15日目)で退職の効果が発生するとされています。「退職届」を提出したのに会社がなかなか辞めさせてくれない場合などでも、2週間を経過すれば退職することが可能です。退職届はそれほどまでに強い効力を発揮するものなので、取り消しができないというわけです。

③ 辞表

ドラマやマンガなどで、主人公が「辞表」と書かれた封筒をスーツの胸ポケットに忍ばせて組織のボスに思い切った意見を具申する、あるいは主人公が所属組織の意向と全く異なる意向で辞めざるを得なくなって辞表を叩きつける、というシーンを見かけることがある人も多いのではないでしょうか。実はこの辞表というものは会社の経営層、あるいは公務員がその職を退く際に出す書面なので、例えば企業の平社員が「辞表」と書かれた書面を上司に出す、ということはあり得ないのです。もしドラマやマンガの中でそんなシーンがあったとしたら、フィクションだからだと思っておいてください。そのイメージのまま真似をしたら、陰で笑われてしまうことになりかねません。役員や公務員として勤めている人であれば、辞表を出すのが正しいということになります。

名前は似ていても、このように「退職願」と「退職届」、そして「辞表」はそれぞれ持つ意味が違っています。立場や場面に応じて正しい使い方ができるよう気をつけましょう。

退職願を出す前に

平社員が上司に退職の意向を伝えて、円満退職をしたい場合には退職願を出すのがベストでしょう。そのために確認しておきたいのは、会社の就業規則です。会社によって、「退職を希望する○日前までに申し出る」等の規定が設けられています。上記にて紹介している通り、民法(627条1項)では、退職を申し出てから2週間(正式には14日を経過した後の15日目)で退職を認めるとされています。ただ、それではほとんどが一方的な「宣言」になってしまうため、円満退職とは程遠くなってしまいます。会社の就業規則に則って、前もって伝えておくと良いでしょう。例えば30日前までには退職の意向を伝えるようにといった会社の場合は、遅くとも30日前までには退職願を出したいところです。会社からしても欠員の補充や引き継ぎなど、対応に追われることとなるので、早めに伝えておければその方がスムーズに進むでしょう。ギリギリの場合は引き留めや引き延ばしに遭う可能性が高くなってしまいます。自分が退職した後の会社の対応を考えて、会社の人たちが困らないように引継ぎ資料を整えたり、期間に余裕を持って伝えたりすることで、円満退職に近付くことができます。

提出が不要な場合は?

どのような場面でも、退職願や退職届が必須というわけではありません。これらの書面を出さなくて出さなくてもいい場合がありますので、それぞれの場面について解説します。

労働契約が期間の定めのあるもので、期間満了による退職の場合

たとえば契約社員の場合等です。3年契約の有期雇用が満了してそのまま退職を希望する場合、仮に会社が退職願や退職届の提出を求めてきても提出する必要はありません。もし契約期間中に退職を希望する場合は退職願や退職届が必要です。

退職勧奨による退職の場合

退職勧奨とは、俗に言う「肩たたき」です。退職の勧奨を行われたとき、退職の意思がない場合は応じる義務がないため、退職願や退職届を提出する必要はありません。なお、退職勧奨に応じる場合は、退職願や退職届を出すことになる場合もあります。ただ、退職勧奨の場合は会社から退職を勧められているため、退職の旨を会社がすでに把握しています。そのため、退職願などが必要かどうかは会社の判断により異なると言えます。詳しくは、退職について上司や人事と話をする際に確認すると良いでしょう。

解雇の場合

書面や口頭で解雇通告を告知された際、退職届や退職願の提出を求められた場合は、これらの書面を提出する必要はありません。解雇の通告は、勤務先(使用者)による「雇用契約」の意思表示であり、労働者の意思と無関係だからです。

退職願と退職届の文面

では、実際に退職願と退職届(辞表)の文面について、どのように書けばいいのでしょうか。主に注意点に焦点を当てて、詳しく見ていきましょう。

退職理由

退職願や退職届、辞表には、退職理由を書く必要があります。しかし具体的に「人間関係が嫌だから」「給料が上がらないから」なんて書く必要はありません。逆に、あまりにも赤裸々に会社の不満を書き連ねてしまうと、会社との関係が悪化してしまう可能性があります。人間関係や職場環境、転職などの理由で辞める場合は、「一身上の都合」とするのが一般的です。一身上の都合とすると、つまりは自己都合での退職と見なされます。

注意する必要があるのは、退職勧奨に応じた、あるいは早期退職制度を利用する場合などの場合は、書面の文章に「一身上の都合により」と入れないということです。これはあくまでも会社の事情、すなわち「会社都合」で退職するからです。会社都合で退職する場合、ハローワークで相談した際に「特定受給資格者」として扱ってくれる可能性があります。特定受給資格者は、いわゆる失業給付での3ヶ月の給付制限がない上に、所定給付日数の優遇(90日~330日)があります。

日付

文面の中には、二つ日付を入れる必要があります。一つは自分が退職を希望する日付、もう一つはその退職願(退職届・辞表)を提出する日付です。もちろん提出する日以前にあらかじめ記入して用意するでしょう。しかし提出日に関しては記入した日付ではなく、上司に提出する日を書くようにしてください。退職する日付は「○月末」などではなく、「令和○年○月○日」など、明確に記入します。ただ、退職願に記入した日付はあくまで希望であり、この時点で確定しているわけではありません。退職願を提出した後の上司との話し合いで前後する可能性もあります。

以下に退職願と退職届の文面を記載しています。例文では退職理由について、具体的な理由を書く、という前提で「(あるいは「退職勧奨に応じ」「早期退職応募につき」等)」など他の理由の例を記載していますので、自分の事情に合わせて書くようにしてください。

なお、これらの届け出について特に指示がない場合は、A4かB5の無地かシンプルな罫線の便せんに、縦書き、かつ手書きで提出することが求められます。また、会社規定の文章での提出になる場合もあります。提出時の封筒(郵便番号枠のない無地のもの)の表書きはそれぞれ提出する書面にあわせて記載します。ここでは一般的に多い退職願のサンプルを紹介します。

<退職願の例文サンプル>

<退職届の例文サンプル>

退職願(退職届・辞表)の書き方は、要点さえ掴んでいれば難しいことではありません。必要な項目を書いて、一度も退職の話を切り出していないのに退職届を突き付けたり、退職理由に会社への不満を連ねたりしなければいいのです。最近ではインターネットでこうしたテンプレートを確認することもできますし、特にオリジナリティーが求められるわけでもありません。ポイントを押さえて、抜けのないようにしておきましょう。

退職願の提出

さて、こうして完成した退職願は、自ら上司に渡さなければいけません。そうすると、上司と二者面談、または人事や他の上司を交えて三者面談という展開になるのが一般的です。退職について、上司とのこの話し合いを憂鬱に思う人も多いのではないでしょうか。退職することを伝えたら退職日まで気まずいと思うかもしれませんが、なかなか言い出せずにズルズルと退職日が近付いてから言うのは悪手なので要注意です。退職日まで余裕を持った時期に、上司の手が空いたタイミングを見計らって声をかけてください。なるべく他の人の目や耳に入らない場所で話ができるよう注意しましょう。

退職理由は正直に言わない方がいい?

いざ退職願を提出しても、退職理由を聞かれたらなんと答えるべきかと悩む人も多いと思います。上司との関係性にもよりますが、嘘をつきたくない心理も働きます。また、会社で嫌な思いをした人は最後に不満をぶちまけたい気持ちもあるでしょう。ただ、正直に伝えるのが良いとも限りません。例えば人間関係の悩みを挙げたら異動を提案されたり、仕事量を理由に伝えたら業務内容の分担をしようと提案されたりして、退職の話が流れてしまった…というケースもあります。もちろん、それで退職を見送って改めて腰を据えて働くつもりならそれも良いでしょう。しかし何を言われても辞めたいという気持ちの時は、その厚意が負担に感じてしまう場合もあります。

退職理由を伝えるとしたら?

どうしても上司から退職理由を聞かれて、「一身上の都合」で押し通せなかった時は、当たり障りない理由を伝えると余計なトラブルは少なくて済みます。一番波風が立たなくて無難なのは「やりたいことがあるから」です。他にやりたい仕事があって転職するというのは、前向きでありながらも本人の気持ちがもう現在の会社にはないことを暗に伝えています。しかし現在の会社を否定するわけでもないので、上司からしても比較的受け入れやすい言葉です。ただ、純粋な興味から「次にどんな仕事をするのか」と聞かれることも多いでしょう。そのため、あらかじめ答えを用意しておく必要があります。万一本当は希望していないにもかかわらず適当な業界を挙げたら上司の方が詳しかった…なんて事態もあり得るからです。また、「家庭の事情」を理由に退職するケースも多いようです。親や祖父母の介護、配偶者の転勤などが多いですね。ちなみに本来は一身上の都合と伝えるだけで、詳しい理由を伝えなくても良いのです。

同僚や取引先への報告は?

上司に退職の意向を伝えて話し合いをするまで、他の同僚には退職するつもりであることを言わないことをおすすめします。その人から他の人に話が漏れてしまう可能性もあるからです。また、そうした場合は社内のモチベーションが下がることもあります。職場環境が良くない場合は、退職ドミノが起きてしまうことも。そんな状態になった後で上司と話し合いをするのは、ハードルが無駄に上がってしまいますし、引き留めに遭う可能性も高くなります。同僚への報告は、上司へ話した後が鉄則ということを覚えておいてください。また、他の社員や取引先への退職の話を切り出すのを、「少し待ってほしい」と上司から止められる可能性もあります。特に取引先などは状況にあわせてタイミングを図る必要があります。そうした場合は上司と相談しながら、良いタイミングを狙って自分が退職すること、そして自分の後任をあわせて紹介するようにしましょう。

引き継ぎは万全に

上司と話し合って退職日を決定したら、ついでに「退職届の提出は必要か」をその場で聞いておくとスムーズです。必要な場合既定の書式はあるのか、提出期限はあるのかも併せて確認しておくとなお良いでしょう。そこまで確認できたら、後は退職日まで自分の仕事をきっちりこなすだけです。自分がいなくても仕事が上手く回るように、残された周囲の人々が苦労しないようにと考えて引き継ぎのマニュアルや資料を作ってあげるとより親切です。円満退職を狙うからには「立つ鳥跡を濁さず」としたいものですよね。引き継ぎに問題がなければ反感を買うことも少ないので、自然と円満に退職できるのです。

退職願を提出しても無視されてしまったら?

会社の環境が良くない場合は、退職願を出しても上司が話し合いに応じてくれない場合もあります。「忙しい」という理由で先延ばしにしようとしたり、話さえできなかったりという状況です。万が一そうなったら、そもそも上司が部下の相談に応じてくれない時点でそんな会社は辞めるべきだと考え、自分の判断を褒めてやりましょう。ただ、退職の話が進まないのは困ってしまいます。何度催促しても応じてくれない、具体的な日にちを言わずに先延ばしにされるなどの対応をされた時は、退職代行による退職を検討することをおすすめします。退職代行は、自分の代わりに退職の意向を会社に伝えてくれるサービスです。退職を認めてもらえなかったり、退職の意向を言い出しにくかったりする時は、退職代行にお願いするのも一つの方法です。

まとめ

退職する際には、退職願、退職届、辞表など様々な名称の書類が存在しますが、どれも立場や状況に応じて用途が変わります。円満退職をしたい平社員が退職の意向を伝える手段としては退職願が適切ですが、自分の立場と状況にあわせて正しいものを使用しましょう。退職願(退職届・辞表)は要点をおさえて、シンプルにまとめて提出します。転職の他、職場環境や待遇への不満など、自己都合による退職の場合、退職理由は「一身上の都合」で問題ありません。ただ、上司との話し合いで退職理由を言わなければいけない場合は、なるべく引き留めに遭いにくい材料を伝えるのが良いでしょう。円満退職をしたいのであれば、退職願を提出するまでの段取りやその後の引き継ぎに気を配るのがおすすめです。

 

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