2022.06.24

退職について

SESで契約期間内に退職するためのポイントとリスク

近年、様々な雇用契約のもとでの働き方が増えてきています。今回は有期雇用の契約社員とIT系で増えてきているSES(システムエンジニアリングサービス)契約での退職について考えてみます。記事前半で契約社員について、記事後半でSESについて取り上げます。

増加する契約社員・派遣社員など非正規雇用

社会情勢の変化により派遣社員等含めた契約社員など非正規雇用が増加傾向にあり、厚生労働省の統計データ「労働力調査(詳細集計)平成30年(2018年)平均(速報)」では、

「2018年平均の役員を除く雇用者5596万人のうち、正規の職員・従業員は、前年に比べ53万人増加し、3476万人。非正規の職員・従業員は84万人増加し、2120万人。」

との数字が発表されています。

さて契約社員は、雇用期間を定められている社員のことで、原則としてこの雇用期間内に退職することはできません。契約期間、例えば3ヶ月や1年と定められた期間ごとに契約更新かあるいは終了で退職、ということになります。

問題は、労働環境が自分にはあわない、あるいはブラック企業で耐えられないなどの理由でどうしても退職したくなった場合です。

この時、絶対にやってはならないのは、勤務先・派遣先に連絡することなく出社拒否し無断退職すること、すなわち「バックレ」です。

無断で退職したことで、損害賠償請求されると言われることがあります。あるいは無断退職を理由として勤務先から「懲戒解雇」にされてしまうと離職票に「重責解雇」と記載されるため、転職活動時に離職票や退職証明書の提出を求められた場合は採用判断時に不利に働く可能性もあります。

原則「中途退職」できない契約社員が中途で退職するには?

それでは、契約社員が中途退職する方法はどのようなものがあるのでしょうか。それは次の2つの場合です。

 ①合意退職

 ②やむを得ない理由による雇用契約解除

それではこの2つはどういうことなのか、詳しく見ていきましょう。

①合意退職

これは文字通り、契約社員の場合は勤務先が、派遣社員の場合は派遣会社が退職を認めた場合、退職することができる、というものです。体調不良や仕事と適性が合わなかったなど、契約社員の場合は勤務先、派遣社員の場合はその理由を派遣会社に認めてもらうことで合意が取れれば大丈夫なのです。

派遣社員の場合は、派遣元企業と合意が取れれば、派遣元が派遣先企業に連絡してくれるので、派遣社員がさらに派遣先企業と何か話し合いを行う必要はありません。

②やむを得ない理由による雇用契約解除

これは民法628条によると、やむを得ない事情がある場合には、契約途中でも退職が可能とされています。

民法628条

雇用期間に定めがある場合:当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

 

この「やむを得ない理由」として、「病気」や「通勤が困難な転居」、「介護」などが挙げられます。ただし、その事由が当事者の一方的過失によるときは、相手方に対して損害賠償に応じなければならないと定められています。したがって、契約期間の途中で契約を打ち切ることによって、使用者が被った損害については、賠償を請求されることもあり得ます。

揉めそうなら「退職代行サービス」を利用しよう

合意退職ができそうな場合でもどうしても伝えにくい場合もあると思います。また、勤務先・派遣先がブラック企業等で退職を伝えても拒否、あるいは前述のように損害賠償を言い出す可能性があるかもしれません。

このような時こそ勤務先・派遣先への連絡に「退職代行サービス」を利用するとよいと思います。

特に勤務先、あるいは派遣先企業がブラック企業でとても退職を言いだせる雰囲気ではない場合は退職代行サービスを利用するのがベストでしょう。

あらかじめ、退職代行サービスと打ち合わせを行い、退職代行サービスから退職の意思を連絡する当日は事前に休む、あるいは当日連絡するなら体調不良を理由に休む旨を勤務開始時に勤務先・派遣先企業に連絡します。

その上で、その日のうちに退職代行サービスから勤務先・派遣元企業に「やむを得ない理由で退職したい」旨を連絡してもらいます。もし、損害賠償請求など言い出されたら、弁護士による交渉で対応してもらう、というのがベストではないでしょうか。

SESは契約によって立場の違いがある

それではSES(システムエンジニアリングサービス)の場合はどうなのでしょうか。SESとはクライアント(派遣先)に技術者を派遣する仕組み、いわゆる客先常駐のエンジニアなどが該当します。

よりくわしく解説すると、クライアントのシステム開発やインフラ環境構築・運用を行うためにエンジニアの技術を提供するサービスを指します。その際にクライアントとベンダー間で契約を結びますが、クライアントの要望によって立場、すなわち契約形態が異なります。次にその違いをまとめました。

SES(準委任)契約

契約:指揮命令権(労務管理・作業指示)はベンダー側にある/業務を遂行するが基本的に成果物完成の責任は持たない/クライアントからの残業や休日出勤指示は法律的にNG

②派遣契約

契約:指揮命令権はクライアント側にある/業務を遂行するが基本的に成果物完成の責任は持たない/残業や休日出勤はクライアントからの指揮命令に従う

③請負契約

契約:指揮命令権はベンダー側にある/業務を遂行し成果物完成に責任を持つ/クライアントからの残業や休日出勤指示は法律的にNG

一見おなじように見える「客先常駐」スタイルの仕事形式でも、このように契約上の大きな違いがあることがわかります。

SESなどの退職には「弁護士」がおすすめのケースも

SES(システムエンジニアリングサービス)の場合、退職の意向はベンダー、つまり自社の上司に伝えることになります。もちろん、SES契約であろうとも、職業選択の自由(憲法22条)や自由に退職できる(民法627条)がありますので、退職することは可能です。

しかし、仮に上司にアポを取り、平日の客先常駐の業務時間終了後に自社まで出向き退職の意向を伝えても「はい、わかりました」というように、すんなり退職できるとはかぎりません。

「せめてこのプロジェクトが終わる年度末までは頼む」「交代要員を来月中に手配するのでその引き継ぎが終わるまでお願い」となることもあると思います。逆に、本来は成果物完成の義務はないのに「完成させられないのに退職するなら損害賠償請求だ!」と恫喝される可能性もないとは言えません。

また、請負契約の場合は「成果物完成に責任」を持つことになっているので、「退職」というより「契約破棄」となり、より「中断による損害賠償請求」という流れになる可能性があります。

このような状況になると「交渉」が発生するので、場合によっては自力で退職や契約の破棄を伝えるより、費用はかかりますが、弁護士を利用して、きちんと弁護士と相談し状況を整理し、自分に不利にならない形で話をまとめることが重要になってきます。

当然ですが、こちらも「バックレ」は厳禁です。

弁護士を利用して、きちんと今の仕事を終わらせる際に法律的に問題の無いように形を整え、色々と引きずることなく十分にリフレッシュしてから次の仕事に就けるようにしておくことが大事だということを忘れないでください。

なお、派遣契約の場合は、この文章の前半で説明したとおりなので、「原則「中途退職」できない契約社員が中途で退職するには?」をご参考にしていただければと思います。

 

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退職コンシェルジュでは退職者に向けた様々なサービスをご用意し、皆様ひとりひとりの”パートナー”として丁寧かつ迅速にサポートをさせていただきます。 退職する際の社会保険給付金、退職代行、引越し等なんでもご相談ください。ご相談は無料で行っております。

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