2022.07.29

給付金について

傷病手当金と障害年金の併給はできる?

傷病手当金と障害厚生年金の併給は可能?

厚生年金(あるいは共済)に加入している場合、疾病により、日常生活に支障が出た、あるいは勤務先を休まなければならない状況になった際の公的な社会保障として「障害厚生年金」と「傷病手当金」があります。

【障害厚生年金(障害共済年金)】

厚生年金(共済年金)に加入している期間中の傷病で、法令に定められた障害等級表に該当した場合に支給されます。傷病手当金は、業務外の傷病の療養によって休業し、労務不能である日について、休業4日目より給付が行われる厚生年金保険の制度です。

厚生年金保険に1年以上加入していた人が、退職時に傷病手当金を受けていた場合、退職後も継続して支給開始日から最長で1年6ヶ月支給されます。

参考▼障害年金の等級について知ろう
https://www.taishoku-concierge.jp/contents/%e9%9a%9c%e5%ae%b3%e5%b9%b4%e9%87%91%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6/362/

 

【傷病手当金】

健康保険(国民健康保険は除きます)に加入している期間中の病気やケガで、仕事に就くことができなくなった状況が4日以上継続した場合に支給されます。

参考▼【用語】傷病手当、障害年金と障害者年金の違いは?
https://www.taishoku-concierge.jp/contents/%e7%b5%a6%e4%bb%98%e9%87%91%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6/255/

 

以前にも解説していますが、障害厚生年金と障害手当金の受給については可能です。つまり併給できるということになります。

障害年金と傷病手当金、同一疾病での併給は注意が必要?

併給は可能ですが、実は注意が必要な点があります。

同一疾病の場合、障害厚生年金が支給される場合、原則として障害年金が優先的に支給されるため、傷病手当金は全額支給停止されます。

ただし、障害厚生年金(障害基礎年金の加算を含む)が傷病手当金を下回る場合はその差額分が支給されます。計算式として障害年金の年額を360で割った金額が1日当たりの傷病手当金の額に満たないときはその差額を支給することになります。

なお、傷病の原因が異なる場合は、障害厚生年金であっても調整の対象ではないため傷病手当金も全額支給されます。

障害厚生年金と傷病手当金の申請期間が重なる場合の支給金額は?

障害厚生年金と傷病手当金の申請期間が重なる場合の支給金額はどうなるか、例を挙げて見てみます。

①障害厚生年金より傷病手当金の金額の方が多い場合

傷病手当金の金額の給付を受けている期間中に、重複して障害年金の支給開始になった場合を想定してみましょう。傷病手当金の金額が障害年金よりも多い場合、重複期間については傷病手当金から障害年金の日額の差額が傷病手当金の金額として支給されます。下の例のように結果的に傷病手当金は減額されることになります。

▽例:傷病手当金日額7,000円 & 障害厚生年金額216万円

障害厚生年金より傷病手当金の金額の方が少ない場合

傷病手当金の「日額」と、障害厚生年金の「年額を360で割った額」を比較して、障害厚生年金の金額の方が多ければ、重複している期間においては、傷病手当金は受け取ることができません。

▽例:傷病手当金日額5,000円 & 障害厚生年金額216万円▽

なお、本来は①と②のように「傷病手当金を受け取っている時期と障害年金の認定が決まった日が重複している場合は、傷病手当金が調整される」のですが、未調整のまま、両方を下の図のオレンジの部分のように受け取ったとします。その場合、後日に傷病手当金の返金通知というものが届き、一括で返金しなければならなくなります。

傷病手当金と失業給付の併給

傷病手当金と失業給付の併給は、それぞれの制度の運用目的上、ありえません。傷病手当金は冒頭で解説したように「労務不能」であることが給付対象となっています。

対して雇用保険の失業給付は、雇用保険法の定義する「失業」状態であることが前提です。この「失業」とは、単に働いていない状態を差すものでは無く、「労働の意思及び能力があるにもかかわらず、職業に就けない状態」を意味します。傷病手当金の給付の前提となる「労務不能」の状態は、「労働の能力」とは見なせず、雇用保険法上、「失業」の状態ではない、となります。

失業給付の受給期間延長、活用のポイント

傷病手当金と失業給付の併給は不可能ですが、傷病手当金の給付期間終了後に失業状態であれば、失業給付を受給できる制度があります。

これはどういうことかというと、失業給付は、退職日の翌日から1年間のうちで、所定の給付日数に達するまで支給されるようになっています。ところが傷病手当金の給付を最長で1年6ヶ月受けた後、「労務不能」ではなくなり、「失業」状態と見なせるようになったとします。しかし、この時点ですでに退職日の翌日から1年以上経過してしまっています。

その場合、利用できるのが「失業給付の受給期間延長」という制度です。この制度は、疾病や妊娠・出産等のために30日以上働くことができない場合、最大3年間(退職日の翌日からの1年と合わせて合計4年間)延長が可能になる制度です。

申請期間は、離職日翌日の30日後から延長された受給期間最後の日までは申請可能になりました。なお、妊娠中に離職した人の場合は最長4年まで申請が可能です。

なお、これは傷病手当金の話からは外れますが、障害年金と失業給付の場合は、併給調整がないので両方貰うことも可能です。

失業給付は、「働く意思と能力のある」(雇用保険法第4条)人に支給されます。

例えば障害年金受給者で、フルタイムで勤務していた人が退職したとします。この人の疾病が悪化し「働く意思と能力」が無くならない限り、失業給付を受給しつつ求職活動をする権利があるからです。

まとめ

「労務不能」に際して大いに助けになる傷病手当金について、併給調整と受給期間延長について解説しました。どちらも生活を支えてくれる大事なお金の話なので、きちんと把握しておきましょう。

わからないことがあったら、『退職コンシェルジュ 社会保険給付金サポート』や『障害年金の窓口』といったサービスに問い合わせてみるのもよいでしょう。

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