2025.03.08
給付金について
障害者が自己都合で失業保険を受給するメリット・デメリットを解説
障害者が自己都合で退職した場合、所定の被保険者期間を満たしていれば、一般受給者同様に失業保険が受給できます。
しかし、障害者は「就職困難者」に該当する可能性が高く、受給条件や給付日数において優遇措置が適用されるケースがあります。再就職が困難な場合において、失業保険の給付日数は、生活を支える基盤となるため、自分が当てはまるかどうか確認しておきましょう。
本記事では「就職困難者」の分類や障害者が優遇されるポイント、自己都合退職によるメリット・デメリットについて解説します。
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障害者は「就職困難者」に該当する可能性が高い
「就職困難者」とは、雇用保険法において、就職が困難と認められる特定の条件に該当する者を指します。主に、身体障害者、知的障害者、精神障害者、刑法等の規定により保護観察中の方、社会的事情により就職が著しく阻害されている方の5つに分類されるケースが一般的です。
個々の定義と、就職に伴う課題について解説します。
身体障害者
身体障害者とは、身体に永続的な障害を有し、日常生活や就労に支障がある、著しい制限があると認められる人を指します。具体的には、視覚、聴覚、肢体不自由、心臓やじん臓、呼吸器などの障害が該当します。確認については、求職登録票又は身体障害者手帳で行われることが一般的です。
身体障害者の就職には、主に下記の課題があります。
- 職種の選択肢が限られる
- バリアフリー環境の整備不足
- 合理的配慮の理解不足
身体障害者の方は、障害の種類や程度によって、選べる職種が限定されます。身体を動かす仕事が難しい場合、デスクワーク中心の職種を希望することが一般的です。しかし、企業側が十分な配慮を行っていない場合、適した職場が見つかりにくくなります。
例えば、車いすを利用する身体障害者の方にとってバリアフリー化されていない職場では、勤務が困難です。トイレや更衣室など基本的な設備面の配慮が欠けているケースもあります。
企業には、障害者雇用促進法に基づいた「合理的配慮」の提供義務がある一方、概念が十分に理解されていない可能性も考えられます。
知的障害者
知的障害者とは、知的発達に遅れがあり、社会生活や適応行動に支援が必要な人を指します。
知的障害者更生相談所や精神保健福祉センター、精神保健指定医などにより、知的障害があると判定された人を指し、求職登録票または療育手帳により確認が行われます。
知的障害者の就職には、主に下記の課題があります。
- 定型的な業務が多い職場に偏りがち
- 職場内でのコミュニケーションの問題
知的障害者の方が就職する場合、清掃業や軽作業など、定型的な作業が多い職場に偏りがちです。職種の選択肢が狭まりやすく、スキルアップやキャリアアップの機会が少ないという課題があります。
さらに個人差はあるものの、指示に対する理解が困難な可能性や職場コミュニケーションにおける問題が発生する可能性もあります。臨機応変な対応を求められる職場においては、能力を発揮しにくく、企業側が採用をためらうことも考えられるでしょう。
精神障害者
精神障害者とは、「精神保健福祉法第45条第2項」より「精神障害者保健福祉手帳」を交付されている人または統合失調症、うつ病、てんかんなどの精神疾患を有し、長期間にわたり日常生活や社会生活に制約がある人を指します。
精神障害者の就職には、主に下記の課題があります。
- 症状の波による就労の不安定さ
- 精神疾患への理解不足
精神障害を持つ方は、病状が安定しているときは問題なく働けるものの、ストレスや環境の変化により症状が悪化する可能性があります。企業側は欠勤が増えることをリスクと捉え、採用をためらう可能性が考えられます。
また、企業風土によっては「精神疾患=仕事ができない、性格の問題」などの偏見が残っている可能性もあり、採用の難易度が高まります。
保護観察中の者
保護観察中の者とは、犯罪や非行を行った人が、社会内で更生を図るために、保護観察官や保護司の指導・監督を受けている状態にある人を指します。仮釈放者や保護観察付執行猶予者などが含まれ、これらの人々も「就職困難者」として認められる場合があります。
保護観察中の就職の難しさは、企業側が犯罪歴を理由に採用を拒否するケースが多い点にあります。保護観察中の方は、社会復帰を果たすために就職が必要ではあるものの、一般的な就職に比べるとスムーズな雇用が困難です。
社会的事情により就職が著しく阻害されている者
社会的事情により就職が著しく阻害されている者とは、社会的な偏見や差別、環境によって、就職が難しい人を指します。
刑務所等を出所した後、前科を理由に社会復帰や就職が困難な「刑余者」や駐留軍関係離職者、一般旅客定期航路事業等離職者求職手帳の所持者などが該当します。
特に刑務所を出所した後の再就職は非常に難しく、金融業や教育関連など、一定の信頼が求められる職種では、ほぼ雇用が不可能と言えます。
その他
上記以外にも、特定の事情により就職が困難と認められる者が「就職困難者」として認定される場合があります。具体的な受給条件は、最寄りのハローワークへの相談がおすすめです。
失業保険で就職困難者が優遇されるポイント
失業保険受給において、就職困難者が優遇されるポイントは、所定給付日数、求職活動実績、常用就職支度手当の3つです。
所定給付日数
一般的な離職の場合、失業保険の給付期間は最大で150日です。被保険者であった期間をもとに、給付日数が決まります。
|
被保険者であった期間 |
|||||
1年未満 |
1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
||
区分 |
全年齢 |
90日(※) |
90日 |
120日 |
150日 |
※特定理由離職者については、被保険者期間が6か月(離職以前1年間)以上あれば基本手当の受給資格を得ることができます。
就職困難者の受給期間は、最大で360日と3倍以上の受給期間が得られます。仮に求職活動が長引いても、給付日数が長い分、生活基盤が不安定になるリスクが減らせます。
|
被保険者であった期間 |
|||||
1年未満 |
1年以上 5年未満 |
5年以上 10年未満 |
10年以上 20年未満 |
20年以上 |
||
区分 |
45歳未満 |
150日 |
300日 |
|||
45歳以上65歳未満 |
360日 |
出典:ハローワークインターネットサービス|基本手当の所定給付日数
求職活動実績
一般の離職者は、失業手当を受給するために、前回の認定日から次の認定日前日までに2回以上の求職活動実績が必要です。しかし、就職困難者は1回の求職活動実績で済みます。
求職活動実績として認められる主な内容は、以下の通りです。
- 求人への応募
- ハローワーク等での職業相談・職業紹介、各種講習・セミナーの受講
- 許可・届出のある民間事業者が行う職業相談・職業紹介、各種講習・セミナーの受講
- 公的機関が行う職業相談、各種講習・セミナー、個別相談ができる企業説明会等の受講・参加
- 再就職に資する各種国家試験、検定等の資格試験の受験
常用就職支度手当
常用就職支度手当は、就職促進給付のひとつです。障害者などの就職困難者が安定した職業(1年以上の雇用)に就いた場合に支給されます。
就職促進給付には「再就職手当」もありますが、再就職手当は、失業手当の残日数が3分の1以上必要です。一方、常用就職支度手当は失業手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1未満であっても支給の対象となります。
支給額の計算式は、支給残日数により異なります。下記は具体的な計算式です。
- 支給残日数が90日以上:基本手当日額 × 90日 × 40%
- 支給残日数が45日以上90日未満:基本手当日額 × 支給残日数 × 40%
- 支給残日数が1日以上45日未満:基本手当日額 × 45日 × 40%
失業保険における退職理由とは
失業保険の受給には、ハローワークに出向き、休職の申し込みを行う必要があります。会社が作成し、ハローワークに提出した「離職証明書」に記載されている退職理由により、失業保険の給付条件や期間が異なります。
主な退職理由である「自己都合退職」と「会社都合退職」について、詳しく解説します。
自己都合退職とは
自己都合退職とは、労働者自身の意思や個人的な事情により、勤務先を退職することを指します。
下記は、自己都合退職の理由の一例です。
- 結婚、出産、育児などのライフイベント
- 家族の介護や自分のケガ
- キャリアアップのための転職
- 配偶者の転勤に伴う転居
- 職場の人間関係や給与面の不満
- 懲戒処分
自己都合退職の場合、失業保険の給付条件が厳しい点に注意が必要です。実際に失業保険をもらえるまでに、7日間の待機期間+2ヵ月(2025年4月以降は1ヶ月)待つ必要があります。失業保険を生活費に充てようと考えている場合は、注意が必要です。
会社都合退職とは
会社都合退職は、企業側の事情や都合により、一方的に労働者を退職させることを指します。
下記は、会社都合退職の理由の一例です。
- 会社の倒産
- リストラ
- 事業縮小
- 賃金の未払い
- 労働条件の大幅な変更
- 希望退職制度に基づく退職
- 事務所の移転による通勤困難
またパワハラやセクハラ、いじめなどにより退職せざるを得ない状態や、過重労働の場合、会社都合退職として認められるケースもあります。
会社都合退職の場合、失業保険の給付条件は自己都合退職よりも優遇されています。給付制限期間がなく、同じ被保険者期間だとしても、所定給付日数が長く設定されています。
自己都合退職のメリット
自己都合退職のメリットは、本人の意思による退職のため、次の転職活動に影響を与えにくい点です。具体的なメリットについて解説します。
履歴書に書きやすい
会社都合の退職の場合、転職の面接で退職理由を確認されることが一般的です。しかし、自己都合退職の場合、履歴書や職務経歴書には基本的に「一身上の都合」と記載すれば十分です。
ただし、転職回数が多い、頻繁に転職を繰り返しているなどの特異なケースでは、面接官が退職理由を深掘りする可能性があります。「配偶者の転勤により、頻繁に転居が発生しているため」など、面接官が納得する退職理由を準備しておきましょう。
ネガティブな印象を与えにくい
会社都合退職の場合も、会社の倒産など、労働者側に打つ手がないケースの場合は特に問題視されません。しかし、「懲戒解雇」「退職勧奨」などの場合は、要注意です。面接官から厳しい目を向けられ、退職理由を細かく問われる可能性があります。書類選考の段階で「性格に問題があるのでは」「仕事の能力が低い可能性がある」と、低い評価を受けることも覚悟しておきましょう。
一方、自己都合退職の場合、実際の退職理由を問わず「キャリアアップのため」「新たな環境で成長したいと考えた」など、ポジティブな理由に変換することが可能です。面接官に不安要素を与えずに、自分本来の姿で面接に挑めるでしょう。
例えば、健康上の理由で退職した場合、「環境の変化により、自分に合った働き方を模索するため」と変換できます。人間関係の問題で退職した場合、「チームワークを重視する職場を求めるため」といった伝え方が可能です。
ただし、面接を受ける企業の社風や働き方を理解したうえで、違和感のない退職理由・転職理由を考えましょう。個人プレイを重視している会社に対して「チームワークを求める」と発言してしまうと、企業の情報収集不足とみなされてしまいます。
自己都合退職のデメリット
面接時のメリットが大きい自己都合退職ですが、「退職金」「失業給付金」といった金銭的な面から見た場合、障害者の方にとってデメリットが発生する可能性があります。
退職金が少なくなる可能性がある
退職金制度は、企業の任意制度であり、法律で義務付けられているものではありません。つまり企業は「自己都合退職の場合は、退職金を減額するまたは支給しない」と定めることも自由です。
想定していた退職金が支給されない場合、その後の資金計画に影響を及ぼす可能性が高まります。退職を考えている場合は、あらかじめ自社の退職金制度に関する規定を確認しておきましょう。
失業給付金をすぐに受け取れない
一般的に、自己都合退職の場合、7日間の待期期間に加えて、給付制限期間が設けられています。給付制限期間は、2025年4月からは1ヶ月に短縮される予定です。
しかし、障害者の方が自己都合で退職した場合でも、退職理由が「正当な理由のある自己都合」と認められる場合、給付制限が適用されないことがあります。病気や障害の悪化などは、やむを得ない事情による退職として、該当する可能性が高く、この場合、7日間の待期期間終了後、すぐに失業給付金の支給が開始されます。
一方、正当な理由がない自己都合退職と判断された場合は、給付制限期間が適用されます。退職理由が正当なものと認められるかどうかは、受給開始時期に大きく影響するため、注意が必要です。
また、障害者の方が「就職困難者」として認定された場合、自己都合退職と会社都合退職のいずれの場合でも、所定給付日数に違いはありません。
まとめ
障害者の方が自己都合で退職した場合でも、所定の被保険者期間を満たしていれば、一般の受給者と同様に失業保険を受給できます。さらに障害者は「就職困難者」に該当する可能性が高い立場です。就職困難者は、給付日数の優遇措置や求職活動の要件緩和などの特例を受けられる場合があります。
特に、障害のある方にとって、失業保険の給付日数が長く設定されていることは、再就職までの生活を支える重要な要素となります。求職活動を続けながら収入を確保するためにも、適用される制度を正しく理解し、ハローワークでの手続きを適切に進めることが大切です。
しかし、必要な情報を取捨選択し、手続きを行うには手間や時間がかかります。よりスムーズな時給を目指したい場合は、退職コンシェルジュの「社会保険給付金サポート」をご活用ください。サービスを利用しても受給できなかった場合は、サポート料の全額返金保証があります。退職後の生活を考えるためにも、まずは、LINEからお気軽にお問い合わせください。
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