2025.01.15

給付金について

雇用保険を使わなかった場合のメリット・デメリットとは?

雇用保険は一般的に「失業保険」と呼ばれ、離職して次の就職先が決まるまでの間の生活を保障してくれる制度です。ただし、制度を利用するかどうかは自由ですので、再就職までの期間の生活費に困っていないのであれば、制度を使わない選択肢もあります。
実は、雇用保険を使わない場合に得られるメリットもあるため、状況に合わせて判断するとお得になる可能性を知っておくと良いでしょう。
本記事では、雇用保険を使わなかった場合のメリットとデメリットを解説します。自分の場合は使ったほうが良いのか、使わないほうが良いのか確認する際の参考にしてみてください。

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雇用保険(失業保険)を使わなかった場合のメリット

雇用保険(失業保険)は、被保険者期間や年齢に応じた失業手当を一定期間受け取れる制度です。しかし、あえて失業保険を使わないことでメリットを享受できる可能性があります。

まずは、失業保険を使わなかった場合のメリットを2つ解説します。

雇用保険の加入期間がリセットされない

1つ目のメリットは、失業保険の加入期間がリセットされないことです。

失業手当を受給する際、失業保険の被保険者だった期間に応じて受給できる期間(所定給付日数)が決まります。たとえば自己都合で退職した場合、加入期間が10年未満の場合だと所定給付日数は90日ですが、10年以上20年未満加入していると120日です。

しかし、一度失業保険を使ってしまうと加入期間がリセットされてしまいます。再就職が早く決まって失業手当を満額もらわないケースなどは、あえて失業保険を使わず、加入期間を継続させるほうが後々有利になる可能性があります。

空白期間が短くなる傾向にある

再就職までの空白期間が短くなる傾向があることが、失業保険を使わなかった場合の2つ目のメリットです。

失業保険を使う場合、「せっかくなら所定給付日数すべて受け取りたい」という方も多いのではないでしょうか。しかし、所定給付日数をすべて受け取ろうとすると、就職していない空白期間が長くなり、再就職で不利になる可能性があります。

所定給付日数は最低でも90日、最長で330日となっており、1年近く空白期間になると再就職の面接で詳しく聞かれるなど、影響を与えるデメリットを知っておく必要があるでしょう。

もし失業保険を使うことで空白期間が長くなるなら、受給期間中は自己研鑽や学び直しでスキルアップを図るなど、実績を作ることが重要です。

雇用保険(失業保険)を使った場合のメリット

失業保険を使わなかった場合のメリットは、雇用保険の加入期間がリセットされないことと再就職までの空白期間が短くなる傾向にあることです。

一方で、失業保険を使うメリットもあります。ここでは、失業保険を使った場合のメリットを2つ解説します。

経済的に安定し就職活動に専念できる

失業手当を受け取ることで経済的に安定するため、就職活動に専念できることがメリットの一つです。

再就職を目指す際に失業保険を使わなかった場合、収入ゼロで就職活動を進めることになるため、精神的負担を感じるケースもあります。

しかし、失業保険を使った場合は退職前の給料をもとにして算出された失業手当を、最低でも90日間受け取れます。なかなか就職先が決まらず、貯金が減っていくプレッシャーを軽減できることが失業保険を使うメリットです。

精神的にもゆとりを持って就職活動できる

経済的だけでなく、精神的にもゆとりを持って就職活動できることも失業保険を使うメリットです。

失業保険を使わなかった場合、収入ゼロの状態で就職活動することになり、早く収入を得たいという焦りから就職先を妥協してしまう可能性があります。妥協して就職した場合、入社後のギャップから早期退職へとつながるリスクもあるため、焦らず自分に合う就職先を見つける精神的ゆとりは重要です。

失業保険を使って再就職が早期に決まった場合、再就職手当がもらえるメリットもあります。

失業保険をもらわないほうが良いケース

ここまで、失業保険を使わなかった場合のメリットや失業保険を使うメリットを紹介しました。

失業保険を使うかどうかは個人の自由ですが、使わないほうが良いケースもあります。ここでは、失業保険をもらわないほうが良いケースを2つ解説します。

転職先がすでに決まっている

退職後の転職先がすでに決まっている場合は、失業保険をもらわないほうが有利になるケースがあります。

失業保険を使わなかった場合のメリットとしても紹介しましたが、失業保険を使うと加入期間がリセットされてしまいます。加入期間によっては失業保険を使うことで後々不利になることがあるため、転職先が決まっている場合はよく検討する必要があるでしょう。

たとえば、雇用保険の加入期間が10年以上の場合、自己都合退職では失業手当を120日分受け取れます。しかし、すぐに再就職してしまうと満額受け取れないだけなく、加入期間もリセットされてしまうため、次回離職時に不利になるかもしれません。

また、加入期間があと1年あれば所定給付日数が増えるという場合も、失業保険を利用しないほうが得になる可能性があります。

離職理由に応じて所定給付日数が変わるため、すぐに就職して加入期間を引き継ぐほうが得になることがあるため、十分に検討して決めることが重要です。

しばらく働くことができない

退職後、しばらく働けない状況にある人は、失業保険をもらうべきではありません。

失業保険は「就職したいという積極的な意思」と「いつでも就職できる能力」がある人を支援する制度であり、できるだけ早い再就職を目指すためのものです。そもそも、就職していない空白期間が長くなると再就職への影響が大きくなるため、失業保険をもらっていても早期就職を目指して就職活動しなくてはなりません。

本人の病気やケガ、家族の介護、妊娠・育児などですぐに働けない場合は失業保険を使わず、受給期間延長の申請をしましょう。最大4年まで延長できるため、働ける状況になった場合にあらためて失業保険を使うか使わないかを選択できます。

そもそも失業保険がもらえないケース

失業保険をもらわないほうが良いケースとして、すでに転職先が決まっている場合やしばらく働けない場合を解説しましたが、失業保険をもらえないケースもあります。

そもそも失業保険をもらえないケースの例は、次のとおりです。

  • 再就職の意思や能力がない
  • 雇用保険の加入期間を満たしていない
  • ハローワークで認定手続きを行っていない
  • 一定の収入がある
  • すでに年金を受給している
  • すでに傷病手当金を受給している

 

ここでは、上記のケースを一つひとつ解説します。

再就職する意思や能力がない

再就職の意思がない場合、失業保険の受給要件を満たしていないと判断される可能性が高くなります。

厚生労働省によると、失業保険の受給要件として「就職するつもりがない」など積極的な就職活動を行わない場合は支給対象外です。そもそも失業保険は再就職を目指す人のための制度のため、就職せずしばらく休むつもりのケースや留学を計画しているケースでは給付が困難になる可能性があります。

また、就職の意思があっても積極的に就職活動している実績がない場合は、申請が通らなかったり受給中でも審査に落ちたりすることもあることに注意しましょう。

雇用保険の加入期間を満たしていない

雇用保険の加入期間を満たしていない場合も、失業手当をもらえないケースの一つです。

失業保険を受給するには、離職前の2年間に12か月以上の雇用保険加入期間が必要です。自己都合退職は加入期間が12か月未満では受給要件を満たさないため受給できません。

ただし、会社都合や家族の介護や育児などやむを得ない状況で離職した場合など例外もあり、この場合は加入期間が離職前1年間で6か月以上あれば、受給対象と判断されるケースがあります。

また、病気や妊娠、育児などやむを得ない事情があって30日以上賃金を受け取れなかった場合、休職期間が雇用保険の加入期間に加算されて受給資格を満たす可能性があります。

離職理由によって受給要件が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。

ハローワークで認定手続きを行っていない

ハローワークで失業保険の認定手続きを行っていない場合は、受給資格を満たしていないと判断されて失業保険をもらえなくなります。

失業保険を受給するためには、ハローワークで所定の手続きを行う必要があります。離職後に求職申し込みをして説明会に出席したとしても、原則として4週間に一度、認定手続きを行わないと受給できません。

認定手続きとは、指定された日に「失業認定申告書」に求職活動状況を記載し、「雇用保険受給資格者証」と一緒にハローワークに提出する手続きです。認定手続きを行わないと失業保険は支給されないため、受給期間中は所定の頻度で手続きすることが重要です。

一定の収入がある

離職後にパート・アルバイトや自営業、内職など一定の収入がある場合、失業状態とみなされず失業保険がもらえない可能性があります。ただし、失業中に収入があるからといって必ずしも失業保険がもらえないわけではありません。原則週20時間未満のパート・アルバイトであれば、必要書類の提出や申告で失業保険を受給できるケースもあります。

失業保険をもらいながら収入を得る場合、認定手続きの際に収入や働いた時間の申請が必要です。申請しなかったり、虚偽の申請を行ったりすると不正受給とみなされて、受給停止や不正受給額の返還、3倍額の納付が命じられる可能性もあるため注意しましょう。

すでに年金を受給している

65歳になるまでの老齢年金を受給している人は、失業保険の受給申請をすると年金が全額支給停止されます。老齢年金と失業手当は同時に受け取れません。

失業手当を受給している間は、老齢厚生年金や退職共済年金の支給が全額停止されますが、失業手当の受給内容に変更はなく、所定給付日数分の満額を受け取れます。失業手当の受給が終了した場合、翌月から年金の支給が再開されます。

年金を受給予定の人、受給中の人は失業手当と年金のどちらを受け取るほうが良いか、金額を比較して慎重に判断しましょう。

また、障害者年金は失業保険と併用可能です。すでに障害者年金を受給している場合、失業保険の申請を行っても支給停止にはなりません。

すでに傷病手当金を受給している

傷病手当金を受給している場合、失業手当と同時に受け取ることはできません。傷病手当金とは、病気やケガで働けなくなったときに、それまでの賃金をもとにして算出された金額が支給される社会保険・健康保険による保障です。

病気やケガで働きたくても働けない状況の人は傷病手当金、働く意思と能力がある人は失業保険で収入が保障されます。すでに傷病手当金を受給している場合、ハローワークで受給期間の延長手続きを行うことで、病気やケガから回復して就職できる状態になったときに失業手当の受給申請を行えます。

再就職が決まった場合は再就職手当を申請しよう

失業保険をもらうために申請しても、すぐに再就職した場合は失業手当をもらえないだけでなく、雇用保険の加入期間もリセットされてしまう点がデメリットです。

しかし再就職手当を申請すれば、申請してすぐ就職したり受給中に給付日数を残したまま就職したりしても損にならないケースもあります。

ここでは、失業保険の受給前あるいは受給中に、再就職が決まった場合に利用できる再就職手当について解説します。

再就職手当とは

再就職手当は雇用保険の「就職促進手当」の一つで、ハローワークで失業認定を受けた人が再就職したときに支給される手当金です。

失業保険の受給中に再就職が決まった場合、給付日数が残っていても残りの給付金は支給されません。そのため、「満額受け取ってから再就職したほうが良い」と考える人も少なからず出てきてしまいます。

しかし、失業保険はそもそも再就職を促進するための制度です。そこで、再就職までの期間が短いほど、手当金の額が大きくなるように設計されている再就職手当で、早期の再就職を促しています。

再就職手当は正社員としての就職に限らず、派遣社員でも支給されますが、給付を受けるにはいくつかの条件があります。

再就職手当の受給条件

早期に再就職するほど得になる再就職手当ですが、誰でも給付を受けられるわけではありません。支給を受けるには、次の要件をすべて満たす必要があります。

1.待期期間7日間の終了後に就職または事業を開始していること
2.基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
3.前の事業主と資本・取引面で密接な関係がない事業主に就職していること
4.1年以上勤務する見込みがあること
5.雇用保険の被保険者になっていること
6.過去3年以内に再就職手当を受けていないこと
7.受給資格決定前に採用が決定していないこと
8.離職理由による給付制限期間満了後、ハローワークや職業紹介事業者の紹介で就職していること(※待期期間満了後1か月の期間内に再就職した場合のみ)

再就職や受給の状況によっては、失業手当の支給残日数が残った状態での再就職でも再就職手当がもらえない可能性があります。たとえば、失業手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1未満の場合、再就職手当の受給条件に当てはまらないため受給できません。

また、失業手当の受給資格が決定する前に採用が決まった場合も、再就職手当の受給ができませんので注意が必要です。

再就職手当の受給金額

再就職手当の受給金額は、失業手当(基本手当)の支給残日数により給付率が異なります。

失業手当の支給残日数

再就職手当の給付率

所定給付日数の3分の2以上

70%

所定給付日数の3分の1以上3分の2未満

60%

上記の給付率に基本手当日額と支給残日数をかけたものが、再就職手当の受給金額です。

再就職手当金の額=基本手当日額 × 所定給付日数の支給残日数 × 60%または70%

ただし、基本手当日額には60歳未満6,395円、60歳以上65歳未満5,170円の上限額が設定されています(2024年8月時点)。

再就職手当の申請方法

再就職手当を受給するためには、雇用開始日の翌日から1か月以内に以下の手順で手続きします。手当金はハローワークが申請書を受理してから、1か月半程度で支給されます。

1.採用証明書を受け取りハローワークに提出する
2.窓口で再就職手当支給申請書を出してもらう
3.申請書を新しい就職先に提出して記入してもらう
4.再就職手当支給申請書と雇用保険受給資格証などを提出する

書類は郵送での提出も可能で消印日が提出日となりますが、ポストに投函した場合は当日の消印にならないこともあるため、提出期限が迫っている場合は直接提出したほうが無難です。

まとめ

退職後、雇用保険を使わなかった場合は失業手当を受け取れませんが、早期に再就職した場合に加入期間がリセットされるデメリットを避けられます。また、失業手当をすべて受け取ろうとすると再就職までの空白期間が長くなり、就職活動に悪影響を及ぼしかねません。

さらに失業手当を受給する場合のデメリットとして、受給中に再就職が決まると残りの手当金がもらえないことが挙げられます。しかし、早期に再就職が決まれば再就職手当が支給されるため、必ずしも損するわけではありません。

しかし再就職手当を受け取るには、就職した日から1か月と短い期間で必要書類を揃えて提出する必要があります。

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