2025.01.15

給付金について

失業保険の受給に診断書は必要?いらない場合といる場合を紹介

雇用保険は失業保険や失業手当とも呼ばれ、退職後に再就職するまで安定した生活を保障するための制度です。

失業保険の受給資格者は離職理由によって、一般受給資格者・特定受給資格者・特定理由離職者の3つに区分されます。区分によっては、失業保険を受給するには、医師の診断書が必要になるケースもあるため注意が必要です。

本記事では医師の診断書が必要になるケースを紹介し、診断書を提出して失業保険を受給するメリットとデメリットを解説します。

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失業保険の受給に診断書は必要?

通常、失業保険の受給に診断書は必要ありません。ただし、退職理由によっては診断書の提出が必要になるケースもあります。

ここでは、退職理由別に失業保険の受給に診断書が必要なのか、どのような書類が必要なのかを解説します。

一般受給資格者(自己都合)の場合

会社を自己都合で退職した「一般受給資格者」に当たる場合は、失業保険の申請時は基本的に診断書が不要です。

一般受給資格者とは、この後解説する特定受給資格者や特定理由離職者に当てはまらない人を指します。具体的には、結婚や転職など個人的な理由で退職した人です。自己都合で退職しているため、会社都合ややむを得ない事情での退職とは受給期間や受給条件が異なります。

自己都合で退職した場合、離職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上あることが受給条件となります。受給申請時に必要な書類は、次のとおりです。

  • 雇用保険被保険者離職票
  • 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、マイナンバー記載の住民票のいずれか)
  • 身元確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • 証明写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm)
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

 

失業保険の受給申請時や支給申請ごとにマイナンバーカードを提示する場合は、証明写真は不要です。

特定受給資格者(会社都合)の場合

会社都合により離職した「特定受給資格者」も、基本的に診断書は必要ありません。

特定受給資格者とは、会社の倒産や解雇など会社都合で退職せざるを得ない人です。再就職の準備をする時間的・経済的余裕がなく離職を余儀なくされることになるため、一般受給資格者とは受給期間が手厚くなります。また会社都合で離職した場合、離職日以前の1年間に雇用保険の被保険者期間が通算6か月以上あることが受給条件です。

基本的に診断書は不要ですが一般受給資格者とは異なり、倒産や解雇に関わる書類が必要になるケースがあります。退職理由によって必要書類が異なるため、失業保険の受給申請前に確認が必要です。

特定理由離職者の場合

やむを得ない理由により離職した「特定理由離職者」の場合、退職理由によっては診断書の提出が必要になる可能性があります。

特定理由離職者とは、期間の定めがある労働契約が更新されなかった場合や妊娠・出産・育児・介護、体力の低下や心身の疾病などで離職せざるを得ない状況になってしまった人です。事業所の移転による通勤不可能や配偶者の転勤に伴う別居の回避も特定理由離職者の範囲に含まれるケースがあります。

診断書が必要になるのは、離職理由が次のケースに当てはまる場合です。

  • 体力の不足
  • 心身の障害
  • 疾病
  • 負傷
  • 視力の減退
  • 聴力の減退
  • 触覚の減退

 

上記以外でも、心身の不調が原因で仕事を続けるのが困難になって離職した場合は特定理由離職者であると判断される可能性があります。

また、本人ではなく家族の死亡や疾病、負傷などのために離職した場合も特定理由離職者と判断されるケースがあり、医師の診断書が必要になります。

特定理由離職者の判断基準

失業保険の受給に診断書が必要になるのは、基本的に特定理由離職者に当てはまる場合です。ここでは、特定理由離職者の判断基準を解説します。

いわゆる「雇止め」

雇用期間が定められている場合、労働契約の更新や延長がされずに離職せざるを得ない、いわゆる「雇止め」となったときは、特定理由離職者と判断される可能性があります。ただし、特定理由離職者と判断されるためには以下の条件を満たすことが必要です。

  • 「期間の定め」や「更新や延長の可能性」が明示された労働契約である
  • 雇用契約期間を満了している
  • 雇用契約期間の満了日以前に、本人から更新または延長の希望を申し出ている

 

雇止めの場合は特定理由受給者の条件を満たしていることを証明するために、労働契約所や雇入通知書、就業規則などの書類が有効です。

また、期間の定められている労働契約でも更新が「確約」されている場合に、更新や延長がされずに離職したときは、特定受給資格者となるケースがあるため注意しましょう。

健康上の理由

体力の不足や心身の障害など、従業員本人の健康状態が理由で通勤や業務遂行が困難、または継続不可能になり離職した場合は、特定理由離職者と判断されます。健康状態に配慮し、別業務を割り振られても業務遂行が困難で離職した場合も特定理由離職者です。

健康上の理由により離職した場合、失業保険の受給申請の際にハローワークへ医師の診断書など指定された書類の提出が必要になる可能性もあります。

妊娠・出産・育児

「妊娠」「出産」「育児」などが離職理由の場合、雇用保険受給期間の延長が適用されるケースがあります。雇用保険法第20条第1項の失業保険の受給期間延長事由に該当し、離職日翌日から30日以上働けない場合は受給期間延長措置の対象です。

受給期間延長措置を受けた場合に、特定理由離職者として申請するときは受給期間延長通知書の提出が必要となります。

家族の介護や看護

父母の死亡や親族の病気、ケガなど家庭の事情で仕事を続けることが困難になり、離職せざるを得ない場合は特定理由離職者に該当します。退職を申し出たときに、介護や看護がおおむね30日を超える日数を要すると見込まれていることが必要です。

家族の介護や看護による特定理由離職者と判断されるためには、扶養控除等申告書や健康保険証、介護・看護を必要とする家族の診断書などを提出する必要があります。

また、自宅の家事や水害などで勤務継続が不可能または困難になった場合も、特定理由離職者の判断対象です。

配偶者または扶養すべき親族との別居生活が困難

家庭状況が変化し、配偶者や扶養家族と別居生活の継続が困難になり離職した場合も、特定理由離職者と判断されます。

仕事のために家族と離れて暮らしていたが、家庭の事情により家族と同居するために転居し、通勤が不可能または困難になった場合が対象です。たとえば、単身赴任で家族と離れて暮らしていたものの、家賃の負担が重く経済的に別居が難しくなったり、子どもが生まれたりして家族と同居するために離職せざるを得なかった場合などが該当します。

特定理由離職者として失業保険を受給する際は、ハローワークに転勤辞令や住民票の写し、扶養控除等申告書、健康保険証などの提出が必要です。

通勤不可能または困難

生活環境の変化により、通勤が不可能または困難になったことが理由で離職した場合も、特定理由離職者に該当します。通勤不可能または困難の理由として認められているのは、主に次のケースです。

  • 結婚により住所変更
  • 子どもの保育所や保育施設、親族への保育の依頼先が遠方
  • 勤務先の移転、転勤
  • 住居の強制立ち退き、天災などによる居住地の移転
  • 配偶者の転勤、再就職
  • 公共交通機関などの運輸機関の廃止や運行時間の変更

 

具体的に、通勤困難な通勤時間は往復所要時間がおおむね4時間以上とされています。失業保険の受給申請時に提出が必要な書類は、住民票の写しや転勤辞令、保育園の入園許可証など理由によって異なります。

その他の理由

  • 組織の再編成などで人員整理が行われ、早期退職優遇制度に自ら応募した場合も認定基準を満たす可能性がある
  • 該当するかどうかはハローワークへの問い合わせが必要
  • 解雇や退職勧奨を受けて離職した人は基準を満たさない

ここまで紹介した離職理由に該当しない場合でも、特定理由離職者の認定基準を満たす可能性があります。たとえば、事業所の組織の再編成で人員整理が行われ、早期退職優遇制度に自ら応募した場合も特定理由離職者となるケースがあるため、該当するかどうかはハローワークに問い合わせが必要です。

ただし、解雇や勧奨退職で離職した人は認定基準を満たしません。

失業保険における特定理由離職者のメリット

特定理由離職者は一般受給資格者と比較し、失業保険の受給条件が緩和されていたり支給開始日が早かったりと受給に関して手厚くなっています。

ここでは、特定理由離職者として失業保険を受ける場合のメリットを紹介します。

失業手当の受給要件が緩和されている

一般受給資格者として失業保険を受給する場合、離職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上あることが条件です。しかし、特定理由離職者の受給条件は離職日以前の1年間で被保険者期間6か月以上となっており、一般受給資格者より条件が緩和されています。

受給条件が緩和されているのは、仕事を続けたかったのにやむを得ない事情で退職を余儀なくされた事情を汲み、保護する必要性が高いと判断されているためです。

失業保険の支給が早い

特定理由離職者として失業保険を受ける場合は給付制限期間がないため、一般受給資格者より早く支給されることがメリットです。

給付制限期間とは、7日間の待機期間後から支給認定が開始されるまでの期間です。通常、給付制限期間は2か月ですが、5年間で2回以上自己都合退職で離職している場合は3か月となります。

特定理由離職者の場合は、7日間の待機期間後に給付制限期間なしで失業手当を受け取れます。ただし、待機期間終了後に初回の認定日を過ぎてから振り込み手続きとなるため、実際に支給されるのは申請から約1か月後です。

所定給付日数が長くなる場合もある

特定理由離職者は、失業保険を受給できる期間が長くなるケースもあります。失業保険の受給期間を所定給付日数と呼び、年齢や雇用保険の被保険者期間によって日数が定められています。

所定給付日数が長くなるのは、特定理由離職者のうち雇止めで離職した場合です。家族の介護や看護、育児、通勤困難により離職した場合の所定給付日数は一般受給資格者と同様に90日〜150日と定められています。

雇用期間の定めがあり、雇用契約の継続を希望したにもかかわらず、更新・延長されなかった場合の所定給付日数は最大330日です。

失業保険における特定理由離職者のデメリット

特定理由離職者として失業保険を受給する際、書類集めに時間がかかったり、手続きに手間がかかったりすることがデメリットです。

不正受給を防ぐため、ハローワークに雇用契約書や賃金台帳、医師の診断書、扶養控除等申告書など必要に応じて書類を提出しなくてはなりません。そのため、提出する書類の種類をハローワークに問い合わせて確認したり、必要に応じて会社に書類をもらったりする必要があります。

特定受給資格者の給付金額

失業保険の給付金額は、基本手当日額×給付日数で総額を計算できます。

基本手当日額は賃金日額に給付率を掛けて算出し、給付率は離職時の年齢と退職前の賃金によって異なります。賃金日額は、離職した日の直前6か月に毎月決まって支払われた賃金を180日で割って算出した金額です。

ここでは、失業保険の給付金額を離職時の年齢ごとに解説します(2024年8月時点)。

離職時において29歳以下

賃金日額

給付率

基本手当日額

2,869円以上5,200円未満

80%

2,295円(下限)〜4,159円

5,200円以上12,790円以下

80〜50%

4,160円〜6,395円

12,9790円超14,130円以下

50%

6,395円〜7,065円

14,130円超

7,065円(上限)

離職時において30〜44歳

賃金日額

給付率

基本手当日額

2,869円以上5,200円未満

80%

2,295円(下限)〜4,159円

5,200円以上12,790円以下

80〜50%

4,160円〜6,395円

12,790円超15,690円以下

50%

6,395円〜7,845円

15,690円超

7,845円(上限)

離職時において45〜59歳

賃金日額

給付率

基本手当日額

2,869円以上5,200円未満

80%

2,295円(下限)〜4,159円

5,200円以上12,790円以下

80〜50%

4,160円〜6,395円

12,790円超17,270円以下

50%

6,395円〜8,635円

17,270円超

8,635円(上限)

離職時において60〜64歳

賃金日額

給付率

基本手当日額

2,869円以上5,200円未満

80%

2,295円(下限)〜4,159円

5,200円以上11,490円以下

80〜45%

4,160円〜5,170円

11,490円超16,490円以下

45%

5,170円〜7,420円

16,490円超

7,420円(上限)

特定理由離職者に関するよくある質問

最後に、特定理由離職者として失業保険を受給する際によくある質問をまとめました。これから受給申請を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

失業手当はいつ受け取れる?

特定理由離職者が失業手当を受け取れるのは、7日間の待機期間が経過した後です。待機期間はハローワークで離職票を提出し、求職申し込みして受給資格が決定した日からカウントされます。

退職後、すぐに申し込みをすれば最短で7日間経過後に失業手当の受給手続きに入れます。しかし、申し込みが遅れると支給開始日も遅れてしまうため、早く受給したい場合は迅速に手続きを行う必要があるでしょう。

受給期間の延長はできる?

離職日翌日から原則1年間の受給期間内に働くことができない状態が30日以上続いた場合は、「受給期間延長の手続き」で受給期間を延長できます。受給期間を延長できる条件は、以下のとおりです。

(1)妊娠・出産・育児(3歳未満に限る)などにより働くことができない
(2)病気やけがで働くことができない(健康保険の傷病手当、労災保険の休業補償を受給中の場合を含む)
(3)親族等の介護のため働くことができない。(6親等内の血族、配偶者及び3親等以内の姻族)
(4)事業主の命により海外勤務をする配偶者に同行
(5)青年海外協力隊等公的機関が行う海外技術指導による海外派遣
(6)60歳以上の定年等(60歳以上の定年後の継続雇用制度を利用し、被保険者として雇用され、その制度の終了により離職した方を含む)により離職し、しばらくの間休養する(船員であった方は年齢要件が異なります)

受給期間の延長手続きには、ハローワークで交付される受給期間延長申請書と離職票、雇用保険受給資格者証、延長理由を証明する書類の提出が必要です。

失業保険を不正受給したらどうなる?

失業保険の不正受給と判断されると、給付金を受け取れないだけでなく、全額返還を求められます。場合によっては不正受給額の3倍の金額を返還するよう命じられたり、詐欺罪などで処罰されたりする可能性があります。

不正受給と判断される例として、以下が挙げられます。

  • パート・アルバイトを含め、就労したことを申告しなかった
  • 求職活動の実績を偽って申請した
  • 自営業により事業を開始しているにもかかわらず(収入の有無に限らず)、事実を隠して偽りの申告をした
  • 定年後に「積極的に就職しようとする気持ち」がなく、受給終了後に年金を受給しようと考えている

また、離職票の離職理由欄に虚偽の報告をすることも、不正行為とみなされるため注意が必要です。

まとめ

失業保険を受給する際、特定理由離職者のうち本人や家族の病気・ケガにより離職する場合は医師の診断書が必要になることがあります。

特定理由離職者と判断されると、受給要件が緩和されていたり支給開始までの期間が短くなったりとメリットもあります。一方で、手続きに手間と時間がかかることがデメリットです。

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