2024.12.02

給付金について

アルバイトやパートでも傷病手当金は受け取れる?受給できないケースも紹介

業務外での病気やケガで働けなくなったときに受給できるのが傷病手当金です。「正社員じゃないと受給できないのでは?」と不安に思うかもしれませんが、実はアルバイトやパートでも受け取れるケースがあります。

この記事では、アルバイトやパートで傷病手当金を受給できる条件や受給額・受給期間・申請方法を解説します。また、満額支給されないケースも紹介しますので、ご自身のケースではどうなるのか確認してみてください。

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アルバイトやパートでも傷病手当金は受け取れる?

傷病手当金は業務外の病気やケガで療養が必要な際に、健康保険の被保険者とその家族の生活を補償するための制度です。正社員に限らず、健康保険に加入しており支給要件を満たせば、アルバイトやパートでも受け取れます。

なお、業務中や通勤中のケガ・病気には労災保険が適用されます。労災保険は会社が労働者に加入させなくてはならない社会保険のため、原則としてアルバイトやパートも保障を受けられる制度です。

アルバイトやパートが傷病手当金を受給する条件

正社員だけでなく、アルバイトやパートでも傷病手当金を受給できます。ただし、受け取るためには支給条件を満たす必要があります。

ここでは支給条件を解説しますので、ご自身のケースに当てはまるか確認してみてください。

業務外の病気やケガで療養中であること

傷病手当金が支給される条件は、業務外の病気やケガで療養中であることです。病気やケガで働けなくなってしまった場合に、収入が途絶えて生活に困窮することを防ぐために支給されます。

原則として、保険診療が支給要件となりますが、保険適用外の自由診療を受けた場合でも、仕事に就けない状態であると認められれば、支給対象となる可能性があります。ただし、美容整形など、病気やケガとみなされないものや、労災保険の対象となる業務上・通勤災害は、支給対象外です。

傷病手当金は入院による療養だけでなく、自宅療養の場合でも受給できます。例えば、1か月に1度の通院で治療を継続している場合でも、労務不能と認められれば受給可能です。

療養のため労務不能であること

病気やケガにより、労務不能であることも傷病手当金の支給条件です。

労務不能とはそれまで行っていた仕事ができなくなる状態を指し、医師の意見と被保険者の業務内容を考慮して判断されます。労務不能であるかどうかの判断は必ずしも医学的な基準に基づくものではなく、社会的な通念も考慮して、健康保険組合などの保険者によって行われます。

ただし、「療養のための労務不能」であることが条件です。医師の指示による通院、入院、投薬治療などが行われていない場合は、支給されません。

例えば、業務外の事故で足を骨折し、その後の治療で骨折は治癒したものの、足に障害が残って労務不能となった場合は、療養のための労務不能とは認められないことから支給対象外です。

4日以上仕事を休んでいること

傷病手当金を受給するには、療養のために連続して3日間仕事を休んだ後、4日目以降も引き続き仕事に就けない状態である必要があります。3日以内の休業では、支給対象となりません。

共済組合以外の健康保険組合に加入している場合は、連続した3日間の待機期間に有給休暇や公休日も含まれます。例えば、金曜日に病気や怪我やケガの療養で会社を休み、土日を挟んで月曜日に有給休暇を取得して療養を継続した場合、待機期間は金曜日から日曜日までとなり、火曜日から傷病手当金が支給されます。ただし、共済組合に加入している場合では待機期間に土日が含まれないため注意しましょう。

待機期間は、連続した3日間の休みである必要があります。2日連続で休んだあと、1日出勤し、その後2日間休んだ場合は、待機期間の条件を満たさないため、支給対象外となります。ただし、出勤した日を挟んだとしても、その後に連続して3日以上休み、4日目以降も引き続き労務不能の状態であれば、支給対象となります。

給与の支払いがないこと

繰り返しになりますが、傷病手当金は病気やケガで働けないときに、収入が途絶えないよう生活を保障する制度です。しかし、なかには休職期間中も一定額の給与を支払う制度のある会社もあります。給与が傷病手当金より多い場合は、傷病手当金は支給されません。

ただし、給与が支払われていても、支給される傷病手当金より少ない場合はその差額が支払われるケースもあります。

アルバイトやパートに支払われる傷病手当金の金額

傷病手当金の支給額は、働いていたときの給与によって異なります。支給額は以下の計算式で計算できます。

  • 1日当たりの支給額 = 支給開始日以前12か月間の標準報酬月額平均×2/3÷30

 

標準報酬月額とは、被保険者が得た給与などの報酬を一定範囲で区分したものです。区分は等級と呼ばれ、給与の総支給額である報酬月額により50の等級に分けられています。

例として協会けんぽの「令和6年度保険料額表」を見てみると、東京都でアルバイトの報酬月額が120,000円だった場合、等級は8で標準報酬月額は118,000円です。日額を計算する際は、過去12カ月間の標準報酬月額の平均を出したうえで、上記の計算式に当てはめます。

アルバイトやパートの傷病手当金の受給期間

傷病手当金を受給できる期間は、支給日数が合計1年6カ月に達するまでです。病気やケガで休んだ期間のうち、最初の3日間は待機期間となり支給対象ではないため、4日目以降から支給日数を計算します。

1回目の療養が1年6カ月未満で、出勤日を挟んで再び療養が必要になった場合は、1回目の残りの期間が2回目の療養で受給できる最大期間です。受給期間が通算1年6カ月を超えるまで、何度でも受給できます。

傷病手当金を受給しながら休職してその後退職した場合は、健康保険の資格は喪失しますが、保険加入期間が継続して1年以上あれば受給も継続できるケースがあります。ただし、加入している健康保険組合によってルールが異なるため確認が必要です。

アルバイトやパートが傷病手当金を申請する方法

アルバイトやパートで働いており、傷病手当金を申請したい場合は、まず会社の担当部署から申請書をもらう必要があります。加入している健康保険が協会けんぽであれば、ホームページから入手できます。

加入している健康保険組合によって書式は異なりますが、記入が必要な内容は基本的に同様です。

1.被保険者情報(健康保険証の記号番号、氏名、住所、振込先口座など)
2.申請内容(申請期間、仕事内容、発病・負傷日、傷病の原因など)
3.事業者が記載する情報(勤務状況、報酬の支払い状況、事業所の情報など)
4.医師が記載する情報(傷病名、初診日、労務不能期間など)

被保険者情報と申請内容を記入したら、治療を受けている医療機関で医師記入欄に必要事項を記入してもらいます。医師記入欄の作成には時間がかかることに留意しましょう。

ご自身と医師欄の記入が完了したら、会社の担当部署へ提出します。事業者の記入欄に記載のうえ、会社から健康保険組合へ提出してもらえます。

受給中にアルバイトやパートを退職した場合は、退職後の期間を申請する際は事業者欄を空欄のままにして健康保険組合へ直接提出しましょう。

アルバイトやパートが傷病手当金を受給できないケース

アルバイトやパートでも傷病手当金を受給できますが、いくつか受給できないケースがあります。ここでは、アルバイトやパートで受給できない主なケースを2つ紹介します。

自分自身で国民健康保険に加入している場合

傷病手当金を受給するには健康保険に加入していることが条件ですが、加入しているのが国民健康保険の場合は受給できません。

ただし例外として、新型コロナウイルス感染症による療養の場合は、各自治体によって国民健康保険でも傷病手当金を受給できるケースもあります。対象期間が終了している自治体もあるため、住所地の自治体の対応を確認しましょう。

加入している健康保険の種類を知りたいときは、健康保険証を見ると確認できます。「健康保険被保険者証」と記載されている場合は協会けんぽや組合健保、「○○共済組合 組合員証」と記載がある場合は各種共済組合です。

配偶者や家族の被扶養者でない場合

国民健康保険以外の健康保険に加入していれば、アルバイトやパートでも傷病手当金を受け取れますが、家族の被扶養者になっている場合は受給できません。傷病手当金は、あくまで健康保険に加入している本人である被保険者に対する保障のため、扶養に入っている家族は対象外です。

傷病手当金を受給したい場合は、扶養から外れてアルバイト先で健康保険に加入する方法もあります。ただし、扶養から外れると家族が配偶者控除を受けられなくなったり、自分自身で健康保険料を支払ったりとデメリットになる部分もある点に注意が必要です。

また、アルバイト先での週の勤務時間や給与額、事業規模によって健康保険に加入できないケースもあります。

アルバイトやパートの退職後に傷病手当金は受給できる?

アルバイトやパートの退職後も傷病手当金を受給し続けることは可能ですが、以下の条件を満たす必要があります。

  • 被保険者期間が退職日まで継続して1年以上ある
  • 退職日の前日までに連続して3日以上出勤せず、退職日も出勤していない
  • 退職日に傷病手当金を受給していた傷病で引き続き労務不能である

 

それぞれの条件を詳しく解説します。

退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あること

アルバイトやパートを退職後に傷病手当金を受給するには、協会けんぽや健保組合への加入期間が退職日までに継続して1年以上あることが条件です。途中で転職していても、同じ健康保険組合への加入が継続していれば問題ありません。

しかし、1年間のうち1日でも任意継続健康保険や国民健康保険に加入していた期間があると支給されないので注意しましょう。

各健康保険の被保険者期間が1年以上あれば、退職後に任意継続健康保険や国民健康保険へ加入したり、家族の扶養に入ったりしても受給できます。傷病手当金の受給資格は、傷病の発生日時点にあるためです。ただし、任意継続被保険者期間にあらたに発生した病気やケガの療養には支給されません。

退職日の前日までに連続して3日以上出勤せず、退職日も出勤していないこと

退職後に傷病手当金を受給する条件は、退職日前日までに連続した3日間の欠勤があり、さらに退職日当日も療養のため欠勤していることです。退職前に3日間の連続した欠勤があっても、退職日に出勤した場合は受給できません。

傷病手当金を退職後も受給したい場合は連続して3日以上出勤せず、退職日も出勤しない必要があります。

退職日に傷病手当金を受給していた傷病で引き続き労務不能であること

アルバイトやパートの退職後に傷病手当金を受給するには、退職日に同じ傷病で働けない状態が続いていることが条件です。

退職後に別の病気やケガで働けなくなった場合は療養が終了した日で支給が停止され、あらたな傷病で受給することはできません。

アルバイトやパートの傷病手当金が調整されるケース

業務外の病気やケガで働けなくなり待機期間の後も労務不能で、国民健康保険を除く健康保険の被保険者であれば、アルバイトやパートでも傷病手当金を受給できます。

注意したいのは、受給中に給与をもらっていたり、以下の制度を利用したりしている場合です。

  • 障害厚生年金
  • 障害手当金
  • 老齢退職年金
  • 休業補償給付
  • 出産手当金

 

ここでは、傷病手当金が調整されて満額受け取れないケースを紹介します。

給与・手当が支給されている場合

傷病手当金は療養中の生活を保障する制度のため、働いていたときと変わらず給与や手当をもらっている場合は支給されません。

しかし、仕事にいけないことで給与が減額されるなどして、給与の日額が傷病手当金の日額より少なくなってしまった場合は差額を受け取れます。

傷病手当金と同じ傷病等で障害厚生年金または障害手当金を受けている場合

傷病手当金と同一の傷病で、障害厚生年金や障害手当金を受けている場合は調整されます。障害基礎年金のみ受給しているケースでは調整されません。

障害厚生年金と併用して制度を利用する場合は障害厚生年金が優先されるため、傷病手当金の日額が障害厚生年金の日額以下の場合、傷病手当金は支給されません。傷病手当金の日額が障害厚生年金の日額より高い場合は、傷病手当金が調整されて差額が支給されます。障害厚生年金の日額は、障害基礎年金を含む障害年金の額を360分の1したものです。

また障害手当金を受給した場合は、傷病手当金の合計額が障害手当金を超えるまで傷病手当金は受け取れません。

障害手当金は、障害厚生年金3級より軽い障害に対して支給される一時金です。たとえば障害手当金が130万円、傷病手当金の日額が5,000円とすると、130万円 ÷ 5,000円 = 260日で傷病手当金の合計額が障害手当金を超える計算になります。つまり、このケースでは261日目から傷病手当金が支給されます。

退職後に老齢退職年金を受けている場合

会社で加入していた健康保険の資格喪失後に傷病手当金の受給を継続し、かつ老齢年金を受ける場合は調整されます。傷病手当金の日額が老齢年金の日額より多い場合は、差額が支給される仕組みです。

在職中で健康保険の被保険者であれば傷病手当金と老齢年金の調整はなく、傷病手当金は満額受け取れます。

退職後に傷病手当金を受給する条件は、次のとおりです。

  • 資格喪失日(退職日の前日)までに1年以上の被保険者期間がある
  • 資格喪失時に傷病手当を受給している、または受給条件を満たしている
  • 3日間の待機期間の後、退職日に労務不能である

 

傷病で3日間仕事を休んだとしても、退職日に出勤すると傷病手当金は受け取れません。退職の手続きや職場の片付けなど退職日に出社が必要な場合は、出勤扱いにならないように注意しましょう。

休業補償給付中に仕事とは関係のない病気やケガで仕事に就けなくなった場合

過去に、仕事中や通勤中の病気やケガで労災保険の休業補償給付を受けていたことがある場合、給付を受けたのと同じ傷病で労務不能となった場合は傷病手当金を受給できません。

また、別の傷病であっても休業補償給付を受けている期間は、傷病手当金の支給額が調整されます。休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より少ない場合、差額が支給されます。

出産手当金を受けている場合

傷病手当金と出産手当金の受給期間が重なっている場合は、傷病手当金が調整されます。調整の方法は以下のとおりです。

 

傷病手当金

出産手当金

傷病手当金の日額 > 出産手当金の日額

差額を支給

満額支給

傷病手当金の日額 ≤ 出産手当金

支給されない

満額支給

出産手当金は傷病手当金と同様に健康保険による保障ですが、育児休業給付は雇用保険の制度のため傷病手当金と併給しても調整されることはありません。

まとめ

アルバイトやパートでも協会けんぽや組合健保に一定以上加入し、療養のため労務不能で4日以上仕事を休んでいるなど一定の条件を満たせば傷病手当金を受給できます。ただし、国民健康保険に加入している場合や家族の扶養に入っている場合は支給対象外です。

また、障害厚生年金や老齢年金を受給する場合も、差額によっては受け取れないケースがあります。

そのため、「自分の場合は受け取れるのか?」「申請方法が難しそう」など、不安を感じる方もいるかもしれません。退職コンシェルジュの「社会保険給付金サポート」では、どのような社会保険給付金を利用できるかご提案するだけでなく、複雑な申請も手厚くサポートいたします。

まずは、不安や悩みをお気軽にご相談ください。

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