2024.11.14

給付金について

退職する前にももらえる給付金「傷病手当金」とは?条件や金額を解説

退職後に受給できる失業手当は耳にしたことがある方も多いかもしれませんが、退職前にもらえる給付金があることをご存知でしょうか。

病気やケガが原因で会社を休まなくてはならなくなってしまった場合、傷病手当金を申請すれば在職中から給付金を受け取れます。ただし、受給には一定の条件があるため、この記事では傷病手当金を受け取るための条件や受給額を解説します。

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退職する前にももらえる「傷病手当金」とは

傷病手当金とは、病気やケガで会社を休まざるを得なかった際、その間給与の支払いがない場合に、生活費の補填目的で健康保険から支給される給付金です。

退職後の受給となる失業手当とは異なり、退職前から受け取ることが可能で、退職後も継続して療養が必要な場合は引き続き給付金を申請できます。

傷病手当金が支給される条件

傷病手当金は療養が必要な場合に適用されますが、どのようなケースでも対象となるわけではありません。

ここでは、傷病手当金が適用される条件を4つ紹介します。

業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること

傷病手当金の受給条件は、病気やケガの原因が業務外で起こったものであることです。業務中や通勤途中の負傷は労災保険の対象になるため、傷病手当金の対象外だという点に注意しましょう。

病気やケガの治療に健康保険適用外の自費診療を利用したとしても、労災適用にならない傷病は傷病手当金の支給対象です。ただし、美容整形など病気やケガとは見なされないものは対象外となります。

仕事に就くことができないこと

傷病手当金の受給は、病気やケガが原因で働けない状態であることが前提条件です。「働けない状態」だと証明するためには、医師の診断が必要となります。

申請には保険組合ごとに書式の異なる「傷病手当金の支給申請書」に記入し、保険組合に提出します。申請に医師の診断書は不要ですが、支給申請書には医師の記入欄があるため、受給を希望する場合は医療機関に書類作成を依頼する必要があります。

連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと

療養のために4日以上仕事に就けなかったことが条件です。待機期間と呼ばれる連続した3日間の休みの後、4日目以降に療養のために休んだ日が傷病手当金の支給対象日となります。

例えば2日間休み、3日目に出勤した場合は支給条件を満たしません。待機期間には土日祝日や有給休暇で休んだ日も含まれるため、例えば、金曜日に有給休暇を取得して休み、土日が休業日の場合、4日目に当たる月曜日から傷病手当金の支給対象日となります。

ただし、共済組合の場合は公休を待機期間に含めることはできません。

休業した期間について給与の支払いがないこと

傷病手当金は病気やケガが原因の欠勤で給与の支払いがない場合に、生活費を補填するための制度です。そのため、会社を休んだ日に給与の支払いや各種年金などの給付がないことが支給条件となります。

ただし、受け取った給与や年金など別の給付金が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されるケースもあります。

在職中から傷病があり、傷病手当金を受け取っていた場合は引き続き傷病手当金を受給可能です。退職後に任意継続で在職時の健康保険に加入し続ける場合や、あらたに国民健康保険に加入した場合でも対象になります。

傷病手当金の支給金額

では実際に、傷病手当金はいくら支給されるのでしょうか。傷病手当金は傷病により会社を休んだ日数分が支給されるため、1日当たりの支給額を計算してみましょう。

日当たりの金額は、支給開始日以前の12か月間の各標準報酬月額平均÷30日×(2/3)です。

支給開始日以前に健康保険加入期間が12か月に満たない場合は、以下のいずれか低い額を使用して計算します。

  • 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額平均
  • 保険組合ごとの標準報酬月額の平均額

 

保険組合ごとの標準報酬月額平均は、全国健康保険協会の場合は30万円(支給開始日が平成31年4月1日以降の方)となっています。平均額は保険組合ごとに異なるため、調べたい場合は加入している健康保険組合の平均額を各ホームページから確認する必要があります。

傷病手当金が支給される期間

傷病手当金は病気やケガが継続していたとしても、無期限で支給されるものではありません。

給付期間は、2022年1月1日から支給開始日から通算して1年6か月です。1年6か月の支給期間中に出勤した日があった場合、出勤した日は支給期間から除外されるため、再び欠勤した日から残りの支給期間が再開されます。

ただし、2020年7月1日以前に支給開始日がある場合は、旧制度が適用されます。旧制度では、支給開始日から最長1年6か月が支給期間となり、途中で出勤した期間も1年6か月の支給期間に含まれる仕組みです。

傷病手当金を受給するための手続きや必要書類

傷病手当金を受給するには、自ら必要書類を揃えて手続きする必要があります。

ここでは、傷病手当金の受給に必要な手続きや必要書類について解説します。

申請手順

まず、会社の健康保険担当部署または各健康保険組合から「傷病手当金支給申請書」を入手します。申請書の記入欄は、申請者本人・会社・医師の3者による記入が必要です。医師の診断書は不要ですが、医師による傷病の証明は必要になるため、申請書を医療機関に持参して医師記入欄に記入してもらいましょう。

申請書に記入したら、必要な添付書類を添えて健康保険組合または協会けんぽへ提出します。退職前に傷病手当金を申請する場合は、会社経由で提出するケースが一般的です。退職後は、健康保険組合や協会けんぽへ直接提出します。

必要書類

傷病手当金の受給に必要な書類は、「傷病手当金支給申請書」と添付書類です。

添付書類は状況によって異なりますが、申請書にマイナンバーを記載した場合はマイナンバーカードまたは通知カード、写真付きの身分証明書のコピーなどが必要になるケースもあります。

申請期限

病気やケガで仕事ができなくなった日の翌日から2年を過ぎると、傷病手当金の申請権利が時効となり、申請できなくなります。期限を過ぎてしまうと受給条件を満たしていても受給権が消滅するため、期限をすぎる前に申請しましょう。

申請の注意点

傷病手当金の申請は事後申請となり、療養期間が過ぎた後に申請書を提出する必要があります。

例えば、医師から3か月の療養が必要だと言われたとしても、3か月先までの分を申請することはできません。3か月の療養後に欠勤となった日数分をまとめて申請するか、1か月ごとや2か月ごとに申請して過去の欠勤分の傷病手当金を受け取っていきます。

傷病手当金の給付には申請から1か月程度かかることが多いため、書類集めに手間取ってしまうと給付までに時間がかかってしまいます。傷病手当金を早く受給したい場合は、必要書類を過不足なく集めて迅速に申請する必要があるでしょう。

状況によっては、事前に案内されていない追加の書類提出が求められる場合もあります。

退職後の給付金一覧

ここまで、退職前に受給できる傷病手当金について解説してきましたが、退職後も受けられる退職給付金も多くあります。

退職給付金の種類

給付金額・貸付額

条件

失業保険

基本手当日額×給付日数

雇用保険の加入期間が一定以上であること

広域求職活動費

求職活動にかかる運賃や宿泊費

被災地域で就業し、震災により離職を余儀なくされた人

傷病手当金

12か月間の各標準報酬月額平均×30日×(2/3)

傷病により3日間欠勤し、給与を受け取っていない場合

就職促進給付

所定給付日数の支給残日数×70%×基本手当日額

基本手当の受給資格があり、安定した職業に就いた人

求職者支援制度

月額10万円

雇用保険の適用がなかった離職者

求職者支援金融制度

月額5万円または10万円(上限)×職業訓練受講月数

職業訓練受講給付金の支給決定を受けた人

特例一時金

基本手当日額の40日分相当

離職日以前の1年間に11日以上働いた月が通算6か月以上

未払賃金立替払制度

最大296万円

倒産認定申請の6か月前の日から2年の間に退職

年金

国民年金は月額68,000円(2024年度の場合)

各年金の加入期間が一定以上であること

退職金

各会社による

各会社による

退職給付金のなかでも、多くの人が耳にしたことのある給付金が「失業保険」ではないでしょうか。

失業保険は、退職後に再就職するまでの生活や求職活動を支援するための制度です。失業の理由にかかわらず、雇用保険への加入実績と求職の意志があれば受給できるため、退職後の給付金として多くの人が利用しています。

まとめ

傷病手当金は、退職前に受け取れる給付金です。病気やケガで仕事へ行けない場合、連続した3日間の休みの後、4日目以降の欠勤日から傷病手当金を受給できます。

退職後も申請すれば傷病手当金を受け取れますが、退職後に病気やケガが治って再就職を目指す場合は失業保険が利用可能です。失業保険を利用した失業手当の受給は求職の意志が必要なため、傷病手当金と同時に受給できません。そのため、退職後に失業手当の延長申請が必要になります。

病気やケガを抱えた状態では、傷病手当金の申請や失業手当の延長申請といった複雑な手続きが難しいケースもあります。「社会保険給付金サポート」では、利用できる給付金のご案内や手続きのサポートなどをお手伝いします。まずは、お気軽にご相談ください。

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