2023.08.04

給付金について

失業給付の受給期間延長って何のため?申請方法や必要な書類を紹介

失業給付の条件として、「失業状態にあり、働く意志がある人」というものがあります。しかし、人によっては働く意志があっても、病気や妊娠など様々な状況で、すぐに働けない人もいます。そのような場合に、決められた申請手続きをハローワークで行うと、失業給付の受給期間を延長できるという制度があるのです。ここでは、失業給付の受給期間延長について解説します。

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そもそも失業給付とは

そもそも失業給付とはどのような制度なのか、改めて振り返っておきましょう。ここでは失業給付の概要と種類について簡単に解説します。

失業給付の概要

失業給付とは、失業や病気、けが、妊娠・出産、育児、介護などの理由で雇用の継続が難しくなった場合に、失業者の生活や雇用の安定を図るべく、一定の条件を満たされると給付される制度です。

一定の条件とは次のとおりです。

  • 雇用保険に加入し、保険料を支払っていること
  • 離職前2年間に12か月以上の雇用保険の被保険者期間(特定受給資格者の場合は1年間に6か月以上)があること
  • 就労の意志と能力があり、求職活動を行っていること

参考:ハローワークインターネットサービス|基本手当について

会社都合で離職した場合は、離職日以前1年間で被保険者期間が通算して6か月以上あれば、失業給付の受給資格を満たします。

失業給付の種類

失業給付は、厚生労働省が定める「失業等給付」の一つです。失業等給付は、大きく分けて4つあります。

失業給付の種類

概要

求職者給付

基本手当と傷病手当があり、失業した際に生活の安定を図るために支給される給付。失業時に要件を満たすことで支給され、期間は離職の理由や状況によって異なり、3ヶ月〜1年程度。

就職促進給付

再就職の援助や雇用継続のサポートを行うために支給される給付。再就職手当・就業促進定着手当・広域求職活動費などがある。

教育訓練給付

失業者のスキルアップを図り、雇用の安定化や再就職を促すために支給される給付。一般教育訓練給付金・専門教育訓練給付金があり、失業者だけでなく労働者にも給付される。

雇用継続給付

就職している人を対象とした就労を継続させるために支給される給付。高齢者の就業への意欲を高め、就労の促進を図るものや、介護や育児などの休業の際に支給されるものがある。

参考:厚生労働省|第13章 失業等給付について

求職者給付に含まれる「基本手当」が、一般的に言う「失業手当」や「失業給付」と呼ばれているものです。

<h2>失業給付の受給期間延長とは
失業給付の受給期間延長とはどのようなことなのかをお伝えします。まず、よく間違いやすい点の確認をしておきましょう。失業給付の受給期間延長とは、失業手当の給付日数延長とは別物です。これは、よく勘違いする人も多く、失業給付の受給期間の延長申請の時になって、気付くケースもあるようです。失業給付の受給期間延長とは、失業手当の給付日数が増えるわけではないことを覚えておきましょう。

失業給付には、失業手当がもらえる「受給期間」があります。そして、受給期間には、有効期限が設けられています。失業給付の受給期間の有効期限は、「働いていた会社を退職した日の翌日から1年間」という決まりがあります。そのため、所定の失業手当がもらえる給付日数のすべてを受給するためには、失業給付の支給開始日と支給終了日が1年間に収まっている必要があるのです。この支給開始日と支給終了日を含めた1年間が、受給期間になります。

通常は、この受給期間内で新たな転職先を探すことが望ましいのですが、病気や妊娠その他の理由により、働きたくてもすぐに働けない状況の人もいますよね。そのような場合に、この1年間の受給期間を延長できる制度のことを、受給期間延長と呼ぶのです。これは雇用保険被保険者向けの制度となっており、受給期間を延長することで、働いていた会社を退職してから1年間が過ぎてしまっても、手続きによって失業給付が受けられるしくみになっているのです。

受給期間の延長が出来る人や期間について

失業給付の受給期間の延長が出来る人の条件や、延長できる期間などを詳しく解説していきます。受給期間の延長が出来る人は、次に示す理由によって「働くことが出来ない状態が、30日以上続いた場合」とされています。

  • ケガや病気ですぐに働くことが出来ない。
  • 妊娠や出産・育児(3歳未満)などで、すぐに働くことが出来ない。
  • 親族などの介護のためにすぐに働くことが出来ない。

 

このような理由から、働きたくても働けない事情がある人が対象となっています。失業給付の受給期間の延長ができる期間は、本来の失業給付の受給期間である1年にプラスして、最長3年間延長することが可能です。

失業給付の受給期間延長の申請方法

失業給付の受給期間延長の申請方法は、大きく分けて2つあります。

  • ハローワークに直接向かう
  • 郵送して書類を送付する

 

また、定年などで失業した際の手続きは上記と異なるため、当てはまる方はしっかりと確認しましょう。

直接ハローワークに来所する場合

窓口で申請する場合は、次の手順で手続きを行います。

1.受給期間延長申請書を受け取る
2.必要書類を用意する
3.必要書類を管轄のハローワークへ持参して提出する

まず、受給期間延長申請書を用意します。申請書は、ハローワークの窓口でもらうか、郵送で請求できます。必要事項を記入し、必要書類と一緒にハローワークに提出しましょう。

病気や怪我などのやむをえない理由で申請者本人がハローワークに行けない場合は、代理人に依頼することもできます。その際は、委任状が必要です。

ハローワークに郵送する場合

郵送で申請する場合は、次の手順で手続きを行います。

1.受給期間延長申請書を受け取る
2.ハローワークの「雇用保険給付・教育訓練給付窓口」へ電話し、郵送する旨を事前に伝える
3.必要書類を郵送で提出する

郵送で申請する場合も窓口で申請する場合と同様に、受給期間延長申請書を受け取り、必要事項を記入します。必要書類が準備できたら、居住地を管轄するハローワークの「雇用保険給付・教育訓練給付窓口」に電話し、郵送で申請する旨を伝えましょう。その後、必要書類をハローワークに郵送します。

定年などが理由の場合

定年退職などで離職し、すぐに次の就職先を探す予定がない場合も、受給期間の延長手続きを行いましょう。手続きを行わないと、失業給付を受け取ることができません。

申請期間は、「退職日の翌日から2か月以内」です。原則として、失業者本人が居住地を管轄しているハローワークに直接提出しなければなりません。

必要な書類は次のとおりです。

  • 受給期間延長等申請書
  • 離職票-2
  • 本人の印鑑(認印・スタンプ印以外)

 

延長可能期間は「元々の受給期間1年+休養したい期間(最長1年間)」です。

なお、65歳以上で退職した人で、すでに高年齢求職者給付金や特例一時金の支給を受けている場合は、受給期間の延長ができません。

失業給付の延長解除とは

失業給付の延長解除とは、失業保険の延長を取りやめることを指します。妊娠出産や病気や怪我などによる理由で失業給付の延長をしていた際には、延長を解除すると失業給付を受給できるようになります。

失業給付延長期間中に就職して働いた場合、自動的に延長は解除されます。給付延長期間は就労開始日の前日までとなるので、覚えておきましょう。失業給付の延長を解除するつもりがなくても延長期間中であるにもかかわらず働いてしまった場合、働ける状態であると判断され、自動的に延長が解除になる可能性があります。

失業給付を受け取るには、失業給付の期間延長申請を解除しなければいけません。延長期間終了と同時に自動的に解除されるわけではないので、働ける状態になったら忘れずに延長解除を申請しましょう。

失業給付の延長解除に必要な書類

ここでは失業給付の延長解除に必要な書類を解説します。失業後すぐに働けない理由から失業給付期間延長を申請した方で、失業給付を受け取れる状態になった方は参考にしてください。

失業給付の受給手続きを行わずに延長した場合

失業給付の受給手続きを行わず、受給期間延長を申請した方の必要書類は以下のとおりです。居住地を管轄しているハローワークによって必要書類が異なる場合があるため、心配な方は一度問い合わせしてみましょう。

  • 離職票-1
  • 離職票-2
    ※次の(1)及び(2)の確認書類
  • (1)個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票の写し(住民票記載事項証明書)のいずれか)
  • (2)身元(実在)確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、写真付であり氏名、生年月日又は住所が記載されている官公署が発行した身分証明書・資格証明書、住民基本台帳カードなど(届出の時点で有効なもの又は発行・発給された日から6か月以内のもの))
    ※(2)の確認書類がない場合は、次のア~ウのうち、異なる2種類をお持ち下さい。(コピー不可)
  • ア国民健康保険被保険者証又は健康保険被保険者証
  • イ住民票記載事項証明書(住民票の写しまたは印鑑証明書)
  • ウ児童扶養手当証書など
  • 写真2枚(最近の写真、正面上三分身、タテ3.0cm×ヨコ2.4cm)又はマイナンバーカード
  • ご本人名義の預金通帳又はキャッシュカード(一部の金融機関は除く。ゆうちょ銀行は可能。) 
  • 受給期間延長通知書(受給期間延長申請をした際にハローワークから交付された書類)
  • 延長理由がやんだ事を確認できる書類(医師の診断書や退院証明書など)

参考:Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~

失業給付を受給中に延長した場合

失業給付を受給中に延長した場合には、以下の書類を管轄のハローワークに提出しましょう。各自治体によって必要書類が異なる可能性があるため、一度管轄のハローワークに問い合わせると安心です。

  • 雇用保険受給資格者証(または雇用保険受給資格通知)
  • 受給期間延長通知書(受給期間延長申請をした際にハローワークから交付された書類)
  • 延長理由がやんだ事を確認できる書類(医師の診断書や退院証明書など)

参考:Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~

失業保険の延長を解除して受給するまでの流れ

失業保険の延長を解除したあとに失業給付を受給するまでの流れは、次のとおりです。

1.最寄りのハローワークを訪れる
2.失業保険の手続きと並行して求職申込を行う
3.雇用保険受給説明会に出席する
4.失業の認定を受ける

それぞれのステップについて、詳しく解説していきます。

最寄りのハローワークを訪れる

前述した失業給付の受給期間延長に必要な書類を持って、受給する本人が居住地を管轄しているハローワークに向かいましょう。ハローワークの営業時間は平日17時までであることが多く、失業給付の手続きには時間がかかるため、できる限り早い時間に行くことがおすすめです。

到着したら、窓口の担当者に「失業保険の延長解除と受給手続きをしたい」と伝えます。自分の順番が回ってきたら、担当職員に用意した書類を提出しましょう。その後、職員より細かい手続きの説明を受けます。

失業保険の手続きと並行して求職申込を行う

窓口では失業保険の手続きと同時に、求職申込を行いましょう。求職申込の手順は、以下のとおりです。

1.求職申込書を記入
2.ハローワークカードを発行
3.パソコンで求人を検索し、応募意思を職員に伝える

事前に気になる求人をピックアップしている場合は、その場で応募できます。「自分に向いている仕事がわからない」「どんな仕事があるのか知りたい」と考えている方は、ハローワークの窓口で求職相談を受けられるため、応募したい仕事が決まらなくても焦る必要はありません。

また、求人検索は自宅でも可能です。すぐに求人が決まらない方は、自宅でゆっくり探しましょう。なお失業保険の延長解除のみを行うのであれば、求職申込書の提出と簡単な面談を受ければ問題ありません。

雇用保険受給説明会に出席する

失業保険を受給するには、原則として雇用保険受給説明会に出席する必要があります。持ち物は筆記用具さえあれば問題なく、特別用意するものはありません。

説明会では失業保険の目的や受給条件、失業中の過ごし方などを詳しく解説してもらえます。そのほかにも雇用保険の受給手続きの進め方や就職活動についての説明があり、重要な内容が多いため集中して聞きましょう。その後、受給資格証をはじめとした必要な書類が配布されます。

失業の認定を受ける

失業給付期間延長の解除を行い、求職申込をしたのち待機期間を終えるまで、失業保険は支給されません。待機期間とは、受給資格の決定を受け取った日より失業状態の期間が通算7日間経過するまでの期間を指します。自己都合で退職した場合には、待機期間満了の翌日から原則2ヶ月間の給付制限を経てから失業の認定を受けられます。

失業の認定を受けたら、原則として継続的にハローワークと面談しなければなりません。4週間に1回設けられている認定日に、受給資格者証と失業認定申告書を提出しましょう。初回以降の認定日以降にハローワークに行かなければ、失業保険の受給が止まってしまう可能性があります。悪質だと判断されてしまうと今後失業保険を受給できなくなる恐れがあるため、ハローワークの指示には素直に従いましょう。

新型コロナウイルスによる受給期間の延長

最後に、新型コロナウイルスの関係で追加された、失業保険の特例に関する受給期間延長について解説します。この特例は、離職の理由が新型コロナウイルスによるもので、なおかつ雇用保険の被保険者であった人の場合に、受けることが出来る制度です。特例の対象となっている人は、以下に挙げる人達となります。

  • 本人が、新型コロナウイルスに感染している疑いのある症状がある。
  • 新型コロナウイルスの影響で、子どもの養育が必要になった人。

このような理由から、30日以上働くことが出来なかった場合に、本来の失業給付の受給期間にプラスして、最大3年まで受給期間の延長を行うことが可能です。しかし、この特例はあくまでも受給期間の延長であり、基本手当の給付日数が増えるというものではないので、注意しましょう。
また、もう1つの特例も存在します。新型コロナウイルスの影響で、自己都合で離職した場合でも、受給が受けられる特例が設けられました。この特例により、新型コロナウイルスの影響で自己都合の離職をした場合でも、「特定理由離職者」とし、給付制限期間をなくし、手当が支給されることになっています。新型コロナウイルスの影響で、やむを得ず離職をしなくてはならなくなった人は、お近くのハローワークに相談してみることをおすすめします。

まとめ

今回は、失業給付の受給期間の延長とはどのようなものなのかや、失業給付の受給期間延長の申請方法などについて、解説してきました。失業給付の受給期間は、支給日数の延長とは異なり、給付日数が増えるというわけではありません。また、この失業給付の受給期間の延長は、雇用保険被保険者向けの制度のため、退職後に働きたくても、病気やけが・妊娠や新型コロナウイルスの影響で働けない人にとっては、とてもありがたい救済措置だと言えるでしょう。もし、上記でご紹介した条件に自分が当てはまるなと感じたら、お近くのハローワークで相談してみてくださいね。

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