2022.01.21

転職・再就職について

業務委託契約での社会保険と年金の手続きガイド

近年では、オンライン技術の発達や副業を推進する流れもあり、フリーランスを目指す方や、会社員でも副業を本格的に行う方が多くなってきました。つまり、誰もが自由に働ける敷居は年々低くなってきていると言えます。

今回は、フリーランスの方たちが、業務委託として仕事を受注した際に、年金や保険をどうするのかについてお伝えします。併せて、会社員の方が副業で業務委託をする場合についても、ご紹介します。

業務委託制度について

2000年代前半に、小泉内閣による規制緩和の影響を受け、ここから非正規雇用が拡大していきました。「ハケンの品格」というドラマが大流行したのもこの時期で、企業の人件費を抑制する効果がありましたが、働く側としては、正規雇用の社員との待遇差が浮き彫りとなってしまいました。

この流れを受けて、業務委託や請負契約という仕事の受け方も誕生し、現在ではフリーランスの方を始め、多様な働き方の1つの形態として、企業側と働く側双方に活用されています。では、業務委託制度とは、どういった制度なのかについてみてきましょう。

業務委託制度とは?

業務委託制度とは、自社で対応できない業務を他の会社や個人といった外部に任せる成果型の仕事を意味しています。特徴としては、この制度自体の法律は制定されておらず、請負契約や委任契約に準拠する形で、制度が存在しているということです。つまり、請負契約や委任契約では対応しづらい部分がある仕事については、これらの法律に準拠しつつ、不足しているところは個別の契約で対応する形をとっていると言えます。これを業務委託と呼び、仕事を発注することができるようになりました。

業務委託契約のメリットとは?

請負契約や委任契約などに比べると、成果物さえ契約主に提供することが出来れば、指揮命令などはなく、仕事のスケジュールなども受けた側の裁量に任されており、自由度の高い仕事をすることが出来ます。

業務委託契約のデメリットとは?

業務委託制度のデメリットは、あくまで成果物に対しての報酬を得られるということに重きを置いているので、成果物を期日までに提供できない場合は、報酬を得ることが難しくなっています。つまり、最低保証などがないということが挙げられます。また、国民健康保険や国民年金保険などの各種社会保険制度の適用を受けるためには、自分で市区町村に出向いて、手続きをしなければなりません。さらに、事業で得た売り上げは、確定申告を自分でする必要があり、申告納税方式で対応する必要があります。

業務委託で働く場合の社会保険制度について

まず、日本の社会保険制度には、年金保険や健康保険などを含めて、主に下記の5つの保険で構成されています。

  • 健康保険
  • 年金保険
  • 介護保険
  • 労災保険
  • 雇用保険

フリーランスと会社員で比較した場合、会社員は上記5つの保険に加入することができ、保険料の負担は会社が半分折半してくれます。対して、フリーランスの方が加入する必要のある保険は、健康保険と年金保険の2つになります。保険料は、全額自己負担となってしまうので、こういった違いを把握しておきましょう。

国民年金保険について

国民年金保険とは、20~60歳の方全員が加入する保険で、65歳から受給が開始される制度です。会社員はこの国民年金にプラスして、厚生年金にも加入しているので、その分、年金受給額に差があります。平成28年度の平均年金月額は、フリーランスが月5万5,464円、会社員が月14万8千円と差があるのが現状となっています。このため、フリーランスの方は、年金上乗せ制度として、以下の2つの方法があります。

  • 国民年金基金への加入
  • 付加年金への加入
  • 個人年金への加入

収入の少ない方は、月額400円の支払いで加入することができる、付加年金への加入をしておくと良いと言えます。一方、余裕がある方は個人年金の加入を検討することもおすすめです。

国民健康保険について

会社員との比較で述べたように、保険料は全額自己負担となっています。目安としては、所得が300万円の場合、健康保険料の目安は月々約2万5千円となります。国民年金保険と合わせると、月に約4万円の出費となります。そのため、フリーランスの方で、少しでも健康保険を安くしたい場合は、以下の方法があります。

  • 国民健康保険組合に加入する
  • 家族や配偶者の扶養に入る

国民健康保険組合は、自分の仕事の職種が該当する場合に、国民健康保険に比べると安くなる可能性があります。例えば、漫画家の方は、文芸美術国民健康保険組合が該当し、加入することが出来ます。

また、年収130万円未満で、かつ、扶養に入れてくれる人の年収の2分の1未満であり、被保険者が3等身以内であれば、扶養に入ることで、保険料の支払いを実質ゼロにすることが出来ます。フリーランスの方で、業務委託として仕事をし始めた方は、こういった保険料を抑える方法があるので、把握しておくと良いですね。

会社員が副業で業務委託をする場合の注意点

ここまで、主にフリーランスの方が個人事業主として、業務委託の仕事をしていく場合の社会保険について述べてきましたが、現在では、会社員が副業で業務委託の仕事をするケースも増えています。会社員の場合は、社会保険については、会社の経理担当者が処理してくれますが、副業で業務委託として仕事をした場合に、発生した収入は確定申告をする必要があります。

所得税の確定申告は、年間20万円未満の場合は行う必要はありませんが、住民税の確定申告は、収入の有無に関わらず、行う必要があるので注意しましょう。副業が会社に知られる理由の最大の原因は、住民税の額が増加していることから発覚するケースです。そのため、確定申告の際は、自分で納付という欄にチェックを入れて、会社とは別に副業の分の住民税を納付しましょう。また、市区町村には、別紙で自宅に送付してくれるように依頼しておくと、より確実だと言えます。

業務委託の特性を把握した上で仕事を進めることが大切

今後は、自由な働き方として、業務委託で仕事をしていく人が増加していくものと考えられます。仕事を複線化されることが出来れば、今後の景気の浮き沈みに左右されにくくなり、安定して生活を営むことができると言えますね。業務委託制度そのものや、必要になる社会保険制度、確定申告を把握した上で、好きな仕事に取り組んでいきましょう。

 

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