2024.04.05
就労について
ブラック企業を判定する方法と実際のチェックポイント
長時間労働や精神的な圧力によって社員を追い込むブラック企業は、社会的な問題になっています。あなたの勤めている会社がブラック企業ではありませんか?ブラック企業であるかどうかの判断方法を知らないと、自分の環境がブラック企業によくある条件に当てはまるのはどうかも分かりません。しっかりと勤め先の会社を見極め、ブラック企業なら時間を無駄にしないようにすぐ辞めるのがお勧めです。もっと社員一人一人を大切にしてくれる会社へ転職しましょう。
そもそもブラック企業とは?
「ブラック企業」という名前を耳にしたことがある人も多いと思いますが、「ブラック企業」という企業があるわけではありません。ブラック企業とは、労働者を過酷な状況で働かせる悪質な企業の俗称です。厚生労働省では、ブラック企業の定義を設けているわけではありません。労働法に違犯するような働き方を強制する企業を指す言葉であるものの、具体的な基準があるわけではないのです。ちなみに厚生労働省では「ブラック企業」という言葉を使わず、「若者の“使い捨て”が疑われる企業等」とされています。
ブラック企業の6つの特徴
ブラック企業にはいくつか特徴があります。ここでは8つのポイントに絞って紹介します。1つであっても普通の会社ではそうそうないことですが、いくつか当てはまるようなら立派なブラック企業と言えるでしょう。
長時間労働
ブラック企業の代名詞と言えば「長時間労働」です。月に100時間前後残業させられたり、始業時間より1時間以上早い出社を求められたりすることで、長時間会社に拘束されることになってしまいます。言うまでもないことですが、法定労働時間は1日8時間、週に40時間までです。時間外労働や休日労働は事前に36協定を締結して、労働基準監督署に届け出る必要があり、それも上限が決められています。しかしブラック企業ではこの決まりを守らず、従業員に長時間労働を強いているのです。
休日・有給が取れない
労働基準法では原則週に1日の休日(法定休日)を与えることを義務付けています。しかし、ブラック企業はこうした法令を守りません。休日出勤を強要され、貴重な休日を仕事に費やすことになる人もいます。また、働き方改革により、有給が年に10日以上付与される労働者には年5日間の有給を取得させる義務が生まれました。ただこれもブラック企業は守らず、自分の有給がどうなっているのか知らないという人も少なくありません。希望の日程に休ませてもらえないことや、より悪質な場合は出勤したにもかかわらず休んだことにされてしまう場合もあります。
残業代が出ない
残業をした、あるいは休日出勤をしたのにその分の給与が支払われていないというのもブラック企業によくある特徴の一つです。いわゆる「サービス残業」と呼ばれているのも、残業代が出ないのに「サービス」として労働力を提供していることを指しています。ただ、一言で「残業代が出ない」と言っても、会社との雇用契約によって前後します。例えば「固定残業代」などが最初から給与に含まれている場合は、あらかじめ決めてある時間内の残業代は発生しません。その時間を超えた分の残業代は発生するので、それもないという場合はブラック企業の可能性があります。
労働条件通知書がない
労働条件通知書とは、労働者に対して賃金や労働時間、その他の労働条件を説明する書類です。入社時や、面接で内定を得た人が入社前に企業に頼むともらえるものでもあります。労働契約時に、企業側は労働者に大して労働条件を明示しなければいけません。それは労働基準法第15条に定められていることでもあり、守るべき法令です。守っていない会社は法令遵守の意識が低いため、労働時間等の労働基準法も軽視している傾向が高く、ブラック企業と言われています。
離職率が高い
ブラック企業の労働環境は労働者への配慮などないため、労働者にとっては劣悪な環境です。そんな環境で働き続けていると、「もうこんな生活は嫌だ」と思うようになるのが当然です。軽い気持ちで転職サイトを覗いてみたら、ブラック企業より好待遇の会社なんてザラにあります。そうなれば転職しようとするのが当たり前なので、ブラック企業は離職率が高くなりがちです。働いている間は長時間拘束されているため転職活動も難しいため、先に退職して時間を確保してから転職活動に専念するという考えの人も多いようです。
ハラスメントが横行している
パワハラやセクハラが常態化していることが、ブラック企業の劣悪な労働環境の原因の一つです。厳しいノルマを課して、ノルマを達成できなかったら大声で叱責したり、毎日のように性的な悪ふざけの言葉を投げかけられたり、というケースが多く見られます。加害者にハラスメントの意識が薄いことが多く、そのハラスメントが当然のように毎日起きているので、被害者もハラスメントだと認識しにくくなってしまうことがあります。社内の常識は社外の非常識ですが、当事者たちにその認識はほぼありません。
自分の会社がブラック企業かどうか
ブラック企業を簡単に見分ける方法として、下のリストを確認してみてください。
- 残業時間が月に100時間以上ある
- 離職率が非常に高く、人の入れ替わりが激しい
- ハラスメント行為が当たり前
- サービス残業が多い
- 休日出勤を強いられて休めない
- 達成不可能なノルマを強要される
長時間残業、休日出勤が当たり前な会社は、言うまでもなくブラック企業です。ブラック企業に勤めている人の中には、過酷な労働が当たり前になっていて、ブラックだと気付けない人もいます。上司に言われるがまま仕事をこなし、自分の担当ではない仕事まで強いられる、いわゆる「使われホーダイ」になっていませんか?ブラック企業は上下関係が厳しく体育会系の部活のような会社が多いので、立場が上の人の言う事は聞かざるを得なくなってしまいがちです。耐えかねた人の中には、無理だとはっきり言った人もいるはず。しかし受け入れてもらえないのがブラック企業です。どれだけ努力しても、ハラスメントに耐えて仕事をこなしていても、評価されることがなかったら辛いですよね。ブラック企業は、評価も休みももらえない会社です。
一般的には残業時間が100時間以上ある企業はブラックと言われていますが、法律では一日8時間、週に40時間の労働時間を超えてはいけないとされています。会社と社員の間で労働時間について話し合っていれば、定められた労働時間は超えても良いとされていますが、ブラック企業の場合はお構いなしです。
「家族経営」のブラック化
ブラック企業は、家族経営、小規模経営のこともあります。あなたの同期や周りに、重役の家族や親族はいませんか?重役の家族と比べて仕事量がとても多かったり、給料に明らかに差があったりする場合もブラック企業の可能性があります。家族経営の企業は身内びいきになりやすく、仕事量や給料に大きく関係します。ひどい企業になると家族の給料だけを上げたり、仕事量を減らしたりするだけでなく、簡単に他の社員をクビにすることもあります。「明日の朝までにやっておけ!」と仕事を任されたあなたと、定時退社する同期とでは、明らかな差がありますよね。
実は、このようなことは家族経営以外でも起こっています。本来企業が社員を雇用する時は、労働基準法などの法律を守りながら経営しなければなりません。ブラック企業の場合は法律という絶対的なルールをおろそかにしがちです。経営者や重役が社員と家族の差をつけるつもりがなくても、ブラック化している可能性があります。
大手企業だと労働組合があるので、社員と経営者の力関係のバランスを平等に近付けることができます。家族・小規模経営だと、労働組合が作られていないことがほとんどです。労働組合がないため社員が意見する機会が無く、長時間残業・給料の差などが生まれてしまい、ブラック化している企業もたくさんあるといわれています。
給料・労働時間の差があっても、自分の努力・実績が足りないと頑張っていませんか?もう一度務めている会社の特徴を見直してみてください。長時間労働や明らかな給料の差があるのに、それが当たり前になっていたら勤めている会社はブラック企業です。
以上の特徴に当てはまらない企業でも、不当に低い基本給や内容不明の手当を支給されている可能性があります。ブラック企業では内容の分からない手当が支給されることがありますが、努力の成果などと言われると良い気分になってしまいますよね。努力の成果と言われた手当は会社の言い訳です。会社利益を確保するために、本来もらえるお金を別の手当として支給しただけです。経営方法・給料・不当な手当・労働時間などに大きな差があるなら、転職を考えてみた方が良いかもしれません。
アメとムチを使い分ける洗脳
ブラック企業の怖さのひとつに「洗脳」があると言われています。その会社の考え方に染まるように仕向けて、無理な仕事でも疑問に思わせないようにしていくのです。実際、ブラック企業で働いていたという人は「当時は辛かったけれどそれが当たり前だと思っていたから疑問に思わなかった」という人が多いでしょう。ブラック企業の洗脳は、何も誰か一人が意図的に新入社員を洗脳するわけではありません。言うなれば会社の空気に染まった全員が一人を洗脳するようなイメージです。長時間労働や休日出勤に慣れている先輩たちの中で過ごせば、「休みたい」とは言い出しにくいでしょう。さらにはとてもできないような量の仕事を与えて、できないことを叱責し、「他の人はできていることが自分にはできない」という無力感と劣等感を植え付けます。真面目な人ほど、「自分は仕事ができない分もっと頑張って挽回しなければ」と一生懸命残業をするのです。そうしたことを繰り返す中で、いつもは厳しい上司が何かの折に自分のことを褒めてくれたらどうでしょう。今までの苦労が報われたような喜びを感じる一方で、もっと頑張ろうという気持ちが湧いてきます。「仕事ができない自分でも認めてくれる」「自分をちゃんと評価してくれるのはこの人しかいない」という感覚を覚えることもあります。ここまで行けば、もう立派な洗脳状態です。
それだけではなく、会社を辞めたいと思わせないように「ここを辞めたら他の会社では通用しない」というようなことを言い続けます。何度もそんな言葉を聞いているうちに、次第にそれが本当だと思い込んでしまいます。実際、長時間労働は睡眠時間が短くなりがちで、睡眠時間が短くなるとネガティブな考えに陥りやすくなります。だから「自分はダメな人間だ」「この会社で頑張らなければ」と考えるようになるのです。
客観的に他社の話を聞いてみよう
久しぶりの休みの日に友達とお酒を飲んだり、気分転換に遊びに出かけたりしたときに仕事の話になることがありますよね。お互いの仕事の話は、ブラック企業を見分けるための大きなヒントになります。上記の「洗脳状態」を解くのにうってつけの方法でもあります。あなたの会社ではコミュニケーション・教育と言いながら、異性の社員にべたべたと触ったり日常的に下ネタを話したりする上司や、自分の担当外の仕事を投げてくる人はいませんか? これ、いわゆる「ハラスメント行為」です。パワハラ・マタハラ・セクハラなどが自社で当たり前になっていると、自分では気付きにくいものです。悪口を言うのが苦手な人も、思い切って友人に相談してみましょう。相談とまでいかなくても、雑談の流れでも十分です。ホワイト企業に勤めている人なら「本当に今時そんな会社があるのか」と驚くことが多いからです。その反応だけでも、自分の会社が異常だと気付くことができます。自分の会社と友人の会社を比べて、ブラック企業かどうかを見極めてください。お互いに似たような会社だった場合は、人の入れ替わりも気にしてみましょう。毎週・毎月のように新しい人が入社してきたり、一年中求人広告を出したりしている企業もブラックの可能性が高いです。離職率が高い原因の多くは、仕事のノルマがきつい、残業時間が多い、給料が見合わないからです。3年以上勤めている人が少なく、先輩の年齢が遠いことも当たり前です。
ホワイト企業の特徴
ホワイト企業とは、言うなればブラック企業の真逆で、労働者にとって「働きやすい環境」の会社のことです。特徴からしてブラック企業の正反対で、例えば下記のような特徴がホワイト企業の特徴です。
- 残業時間が少ない
- 離職率が低い
- 福利厚生が充実している
- 有給を取りやすい
- 女性が働きやすい制度や取り組みがある
- 研修制度が充実している
- 基本給が高い
残業時間の少なさや、福利厚生の種類、基本給などは求人情報から知ることができます。また、ホワイト企業は産休や育休を実際に取って復帰した人がどれくらいいるか、有給取得率がどのくらいかも求人情報に載っていることが多く見られます。研修についても、具体的なスケジュールを挙げて説明してくれている会社は安心ですよね。求人情報だけで会社のことが全部わかるわけではありませんが、それでもある程度は伝わってくるものです。
求人情報からブラック企業を見抜く4つの方法
もしも今ブラック企業に勤めているのだとしても、そうでないにしても、転職をするのだとしたら絶対にブラック企業は避けたいですよね。求人情報を見てブラック企業を見抜く方法はいくつかあります。ここでは転職サイトを見た時にブラック企業を見抜く方法について紹介します。
長期間、または頻繁に人を募集している
時間はかかりますが、「定期的に複数の転職サイトに目を通しておくこと」が重要です。ブラック企業はその会社の体質から離職者が多く、ほぼ常に求人を出しているケースが多いのです。そのため、年中募集しているような会社はブラック企業率が高いと言えます。事業拡大などのポジティブな理由で求人を掲載している会社もありますが、ずっと掲載されている、または頻繁に求人広告が出ている会社は要注意です。
ハードルの低い募集要項
「この会社良いな」と思った時にまず自分が当てはまるかどうかチェックするのが、その会社の募集要項です。例えば大卒以上であったり、業界経験を必須としたりしている会社も多いでしょう。ここで「未経験歓迎」「スマホの操作ができれば大丈夫」「やる気があればOK」など、誰でも入れるようなことを書いていたら要注意です。未経験の職種に転職しようとしている時は心強く感じる言葉ですが、「とりあえず頭数を集めよう」というブラック企業である可能性があります。
明確にされていない基本給
ブラック企業は基本給がとても低く、その分他の手当で補うことが多く見られます。「手取り○万円」「年収○万円」という書き方しかしていない場合は少し怪しいかもしれません。基本給が低くても手当がつけば構わないと思う人もいるでしょうが、基本給が基準となる残業代や賞与などにダイレクトに影響します。万が一、手当がカットされるようなことがあれば大幅な給与ダウンになってしまう可能性があるのです。そもそも給与は仕事をする上で重要な項目なので、曖昧な書き方をしている会社はあまり信用できません。
抽象的な表現が多い
ブラック企業は仕事内容や会社の雰囲気などについて、あえて具体的な表現をせずに曖昧な言葉でぼかしていることが多いです。仕事内容については色々な仕事を押し付けがちになるので、求人内容と違う仕事ばかり回していると「書いてあった内容と違う」というクレームになりかねません。「簡単な書類作成」という一言では何を作るのか分かりませんが、実際には専用ソフトの知識を必要とする書類だったりすることもあります。その仕事をしてくれる人を求めている求人なので、本来きちんとした会社であれば、仕事内容はしっかり明記するはずです。
ブラック企業にいる人が取るべき4つの対処法
自分の会社がブラック企業だと分かったら、どうするべきでしょうか。そもそもブラック企業が自発的に社内環境や社風を改善することはまずありません。たった一人で会社を改善しようと働きかけるのも限界があります。そしてブラック企業に勤めている人だからこそ取るべき行動があるのです。
労働基準監督署に相談する
一番有名なのは労働基準監督署への相談でしょう。個人からの通報によって企業の労働問題に違法性が認められると、企業に対して指導や書類送検などの措置を行ってくれます。法定労働時間を超えた労働を強要されている場合や、休日出勤を強要されることなど、タイムカードの写真やコピーなどを提示できれば話がスムーズです。ただし、パワハラやセクハラ等については明確な違法性が認められにくく、労働基準監督署に相談してもすぐに対処してもらえるケースは少ないと言えます。
合同労組(ごうどうろうそ)に参加する
ユニオンと呼ばれる合同労組は、労働者が一人でも加盟できる会社の外の労働組合のことです。合同労組に加盟して、一人であっても団体交渉を申し入れることによって、会社は話し合いに応じざるを得ません。不当解雇を不服として団体交渉の申し入れを受けた会社はいくつもあります。合同労組はいくつもあり、中には問題解決ではなく慰謝料としてお金を会社から巻き上げることを目的とする団体もあるので、利用する際は見極めが必要です。
証拠集めを徹底する
今すぐには行動を起こすつもりがなくても、いつか証拠が必要になる時が来るかもしれません。例えば日々の暴言の録音や、暴力を振るわれた場合は診断書、サービス残業を証明する記録やパワハラの証明となるメールの保存などです。もしも裁判となった場合は大いにその記録が役立つでしょう。また、いざという時のためというだけではなく、証拠を保存しているということを加害者に知られただけでも抑止効果が期待できます。
退職する
手っ取り早く、そして根本解決になるのは退職して、別の会社で新たなスタートを切ることです。何もブラック企業でずっと我慢して働く必要はありません。会社の改善を期待しても、残念ながら期待するだけ無駄…ということがほとんどです。そんな会社のために使う労力があるなら、自分の再出発のために使った方がよっぽど良いでしょう。ブラック企業である以上、退職を拒否される可能性もあります。そんな場合は退職代行を使ってさっさと縁を切るのがおすすめです。退職代行については「退職代行」ってどんなサービス?」で詳しく紹介しているので参考にしてくださいね。
体調の変化に要注意
日によって気分の浮き沈みが激しい場合は特に気を付けてください。体は大丈夫だと思っても精神的にまいっていて、うつ病や適応障害などの精神疾患の入り口に立っている可能性もあります。今抱いている小さな違和感は、「このままこの会社にいたらまずい」と体が感じ取っているからかもしれません。まだ頑張れる、ではなく限界を感じる前に自分の体調を気遣ってくださいね。日本では我慢して努力を続けて実力を身につけることが良いとされていますが、あなたの体が壊れてしまっては元も子もありません。当然のことですが、心身ともに健康が第一です。精神的に病んでしまったり、重い病気に罹ったりした後に辞めることになったら、新しいスタートを切るまでにどれほど時間がかかるか分かりません。
まとめ
ブラック企業には様々な特徴があります。今回、紹介した特徴と勤めている会社を比べてみてください。もし、ブラック企業だと分かったら、様々な対策はありますが、一日でも早く辞めるのが得策です。次の就職先が決まっている場合は、辞めやすくなります。ブラック企業にあなたの大切な時間や体力を捧げる必要はありません。自分で言ってもダメなら、退職代行サービスなど他人の手を借りてでもブラック企業をやめましょう。そして次こそはブラック企業に入らないよう求人情報の内容にも注意して、新たな環境で本来の力を発揮してください。
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