2019.10.04
障害年金について
障害年金の等級について知ろう
障害年金・障害厚生年金には等級があることは、すでにご承知の人もいらっしゃるかと思いますが、ただ、具体的なその等級の症状とはどのようなものなのか、ご存じない人もいると思います。今回は各等級における認定基準としてどのような症状なのかについて簡潔に解説したいと思います。
障害年金は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の“2階建て制度”
以前に「障害年金基礎知識」でご説明しましたが、日本の年金制度は「障害基礎年金」と「障害厚生年金(障害共済年金)」による2階建て年金という仕組みをとっています。この障害基礎年金はその1階部分に当たります。全国民が加入している国民年金から支給されるもので、学生・自営業・専業主婦(夫)・会社員など職業に関わらず全国民が対象となります。
そして2階部分が障害厚生年金です。会社員の場合は社会保険が適用されている事業所は厚生年金が、公務員や私立学校職員などは共済組合員本人のみが共済年金の対象となります。
「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の認定基準はどうなっている?
では、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の認定基準はどうなっているのでしょうか。これも以前「障害年金にはデメリットがあるの!?」で説明しましたが、障害基礎年金と障害厚生年金の審査は日本年金機構が行っており、全国の申請について東京で審査を行っています。
この認定に際して、どのような基準で支給不支給や等級が決定されているのでしょうか。
日本年金機構において、障害年金の各等級についての認定基準は厳密に決められています。傷病のさまざまな症状や状態に応じてどう認定するかの基準は次の通りです。
①障害基礎年金・障害厚生年金1級
日本年金機構の定義によると1級について「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする。この日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度とは、他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のものである。」とされています。
具体的には同機構によると「例えば、身のまわりのことはかろうじてできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものである。」としています。
この条件に基づき、視力や肢体などの傷病の症状や状態について、次のように認定基準が定められています。
【1級の判定参考基準】
障害等級 | 番号 | 障害の状態 |
1級 | 1 | 両眼が失明したもの |
2 | 両耳の平均純音聴力レベル値が100デシベル以上のもの | |
3 | 両上肢を肘関節以上で欠くもの | |
4 | 両上肢の用を全く廃したもの | |
5 | 両下肢を膝関節以上で欠くもの | |
6 | 両下肢の用を全く廃したもの | |
7 | 体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの | |
8 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの | |
9 | 精神の障害で日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの | |
10 | 両眼の視力の和が0.04以下のもの | |
11 | 両上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が0のもの | |
12 | 両上肢のすべての指の用を全く廃したもの | |
13 | 両下肢を足関節以上で欠くもの |
②障害基礎年金・障害厚生年金2級
日本年金機構の定義によると2級について「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。この日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度とは、必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のものである。」とされています。
同機構によると具体的には「例えば、家庭内の極めて温和な活動(軽食作り、下着程度の洗濯等)はできるが、それ以上の活動はできないもの又は行ってはいけないもの、すなわち、病院内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね病棟内に限られるものであり、家庭内の生活でいえば、活動の範囲がおおむね家屋内に限られるものである。」としています。
この条件に基づき、視力や肢体などの傷病の症状や状態について、次のように認定基準が定められています。
【2級の判定参考基準】
障害等級 | 番号 | 障害の状態 |
2級 | 1 | 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの |
2 | 平衡機能に著しい障害を有するもの | |
3 | そしゃくの機能を欠くもの | |
4 | 音声又は言語の機能に著しい障害を有するもの | |
5 | 両上肢のすべての指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの | |
6 | 体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの | |
7 | 両耳の平均純音聴力レベル値が90デシベル以上のもの | |
8 | 両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの | |
9 | 両上肢のすべての指の用を廃したもの | |
10 | 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を基部から欠き、有効長が0のもの | |
11 | 両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの | |
12 | 両下肢をリスフラン関節以上で欠くもの | |
13 | 一上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が0のもの | |
14 | 一上肢の用を全く廃したもの | |
15 | 一上肢のすべての指の用を全く廃したもの | |
16 | 両下肢の10趾を中足趾節関節以上で欠くもの | |
17 | 一下肢の用を全く廃したもの | |
18 | 一下肢を足関節以上で欠くもの | |
19 | 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの | |
20 | 精神の障害で日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
③障害厚生年金3級
3級については厚生年金と共済年金にある等級で、国民年金には設定されていません。
日本年金機構の定義によると3級は「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。また、「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。」としています。
また、「「傷病が治らないもの」については、障害手当金に該当する程度の障害の状態がある場合であっても3級に該当する。」としています。この条件に基づき、視力や肢体などの傷病の症状や状態について、次のように認定基準が定められています。
【3級の判定参考基準】
障害等級 | 番号 | 障害の状態 |
3級(治らないもの) | 1 | 両眼の視力がそれぞれ0.06以下のもの |
2 | 一眼の視力が0.02以下に減じ、かつ、他眼の視力が0.1以下に減じたもの | |
3 | 両耳の平均純音聴力レベル値が80デシベル以上のもの | |
4 | 両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上80デシベル未満で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下のもの | |
5 | 両眼の視力が0.1以下に減じたもの | |
6 | そしゃく又は言語の機能に相当程度の障害を残すもの | |
7 | 脊柱の機能に著しい障害を残すもの | |
8 | 一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの | |
9 | 一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの | |
10 | 両上肢のおや指を基部から欠き、有効長が0のもの | |
11 | 一上肢の5指又はおや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くのもの | |
12 | 一上肢のすべての指の用を廃したもの | |
13 | 一上肢のおや指及びひとさし指を基部から欠き、有効長が0のもの | |
14 | 両耳の平均純音聴力レベル値が70デシベル以上のもの | |
15 | 両耳の平均純音聴力レベル値が50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下のもの | |
16 | 長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの | |
17 | 一上肢のおや指及びひとさし指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの、又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の3指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの | |
18 | おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの | |
19 | 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの | |
20 | 両下肢の10趾の用を廃したもの | |
21 | 身体の機能に労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの | |
22 | 精神又は神経系統に労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
④障害手当金
障害手当金とは一時金として支給されるもので、厚生年金と共済年金にある制度で、国民年金には設定されていません。
日本年金機構の定義によると「「傷病が治ったもの」であって、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。」としています。なお、障害手当金について要件として傷病の次の状態が該当します。
【障害手当金の判定参考基準】
障害等級 | 番号 | 障害の状態 |
3級に満たない障害 | 1 | 一眼の視力が0.02以下に減じたもの |
2 | 脊柱の機能に障害を残すもの | |
3 | 一上肢の3大関節のうち、1関節の用を廃したもの | |
4 | 一下肢の3大関節のうち、1関節の用を廃したもの | |
5 | 一下肢が5センチメートル以上短縮したもの | |
6 | 一上肢に偽関節※を残すもの | |
7 | 一下肢に偽関節※を残すもの | |
8 | 一上肢のおや指を指節間関節で欠き、かつ、ひとさし指以外の1指を近位指節間関節以上で欠くもの | |
9 | 一上肢のおや指及びひとさし指の用を廃したもの | |
10 | おや指又はひとさし指を併せ一上肢の3指以上の用を廃したもの | |
11 | 一下肢の5趾を中足趾節関節以上で欠くもの | |
12 | 精神又は神経系統に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
※偽間接:骨折部で骨が正しく融合されず、異常な可動性など重篤な後遺症が残った状態
まとめ
今回は障害年金と障害一時金について、支給要件としてこの他に保険料納付要件など重要な認定基準があります。受給を検討する場合はそれらも含めて支給要件を満たしているか確認するとよいでしょう。
▼参考:日本年金機構 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(平成29年) |
障害年金の申請を考えていて、制度の詳しい内容を知りたい場合などは、【障害年金の窓口】など、専門サービスの利用も検討してみましょう。手続きの準備などがスピーディに進められる可能性が高まるといったメリットがあります。
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