2023.04.21

転職・再就職について

失業保険は自己都合退職でももらえるのか?会社都合退職との違い・失業手当をすぐもらう方法

退職届

失業保険の給付時期や給付額は「自己都合か会社都合か」によって異なります。会社から退職を促されたり、辞めざるを得ない状況だったりした場合は、自主的な退職でも会社都合と認められるケースがあるでしょう。

この記事では、自己都合退職と会社都合退職の違いと失業保険をできるだけ早くもらう方法、自己都合から会社都合に変更する方法を解説します。また、失業手当以外にもらえるお金(再就職手当)についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

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自己都合退職でも失業保険がもらえる対象です

「今の仕事が嫌になってしまった・・・」「もっと自分に合った会社に転職したい!」などといった自己都合退職の場合でも、条件を満たせていれば失業保険を受け取る事ができます。

失業保険(失業手当)の受給条件は2つある

失業保険を受け取るためには、下記の条件をどちらも満たしている必要があります。

①ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。

したがって、次のような状態にあるときは、基本手当を受けることができません。
・病気やけがのため、すぐには就職できないとき
・妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
・定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
・結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき

②離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること。
ただし、特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。
参考:ハローワーク

【特定受給資格者】というのは会社都合退職のことで、会社が倒産した場合や解雇された場合のことを指します。
【特定理由離職者】は2つの区分に分かれており、【特定理由離職者1】は契約更新を希望したが更新されなかった場合の事を指すので会社都合退職となり、【特定理由離職者2】は心身の障害や疾病を理由に退職した場合がこれにあたるため自己都合退職扱いとなります。

失業保険がもらえるまでの時間や期間

待期期間とは基本手当がもらえない期間のことで受給資格決定日から7日間ある

ハローワークで失業保険の申請をしたらすぐに手当ての支給がスタートされる訳ではなく、必ず【待機期間】といわれる7日間のお休みをとる必要があります。
これは【仕事をしていない状態である】とハローワークが確認するための期間なので、その間は手当てが支給されません。
決して【自宅待機しないといけない】という意味ではありません。

給付制限とは給付金への依存を防止する目的で設けられている基本手当を支給しない期間のこと

会社都合退職の場合は、前述した待期期間が終了したら支給開始となります。
しかし自己都合退職の場合は待期期間終了後、さらに【給付制限】という期間を待つ必要があります。
給付金の受給に依存して再就職活動を怠ってしまうことを防止するために設けられていますが、法改正により令和2年10月1日以降に「正当な理由がない自己都合退職」をした場合、5年間のうち2回までは給付制限期間が2か月間に短縮されました。
参考:厚生労働省

所定給付日数とは基本手当の受給日数のこと

失業保険を何日間受給できるのかは、退職理由や雇用保険の加入年数によって決まります。

【自己都合退職の場合】

離職時の年齢 被保険者であった期間
10年未満 10年以上20年未満 20年以上
65歳未満 90日 120日 150日

 

【会社都合退職の場合】

離職時の年齢

被保険者であった期間
1年未満

1年以上

5年未満

5年以上

10年未満

10年以上

20年未満

20年以上
30歳未満 90日 90日 120日 180日
30~34歳 120日 180日 210日 240日
35~44歳 150日 180日 240日 270日
45~59歳 180日 240日 270日 330日
60~64歳 150日 180日 210日 240日

参考:ハローワーク

このように自己都合退職より会社都合退職の方が、給付日数も大きく優遇されます。

受給期間とは失業保険が受給できる期間のこと

失業保険は会社を退職した際に受け取れる手当金ですが、再就職するまでの間ならいつでも受け取れるという訳ではありません。
原則、退職日の翌日から1年間のうちに手当を受け取り切る必要があるのです。

しかし失業手当受給中に、病気や怪我、妊娠や出産などで30日以上働けない状況にあった場合、その分の受け取り可能期間を延長する事ができます。
この手続きを行う事で、1年間だった受け取り可能期間を最大で4年間まで延長する事ができるのです。
参考:厚生労働省

自己都合退職と会社都合退職の違いは4つ

自己都合退職とは「労働者側の申し出により」労働契約を解除すること

労働者本人が希望して退職をすることを、”自己都合退職”といいます。
転職や起業、体調不良・転居・結婚・家庭の事情などを理由に”自分の意思”で退職を申し出た場合、自己都合退職となります。

会社都合退職とは「会社側が原因で」労働契約を解除すること

“会社都合退職”とは、会社側の都合で退職を余儀なくされるケースのことをいいます。
たとえば会社の倒産や経営不振など、労働者本人には全く非のない形で退職せざるをえなかった場合はこれに当たります。

「事務所の移転により、通勤が困難になった場合」や「退職勧奨に応じた場合」なども会社都合退職となり、その他にも以下の理由である場合は会社都合となる可能性があります。
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◆特定受給資格者

・【倒産】等により離職
① 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者
② 事業所において大量雇用変動の場合(1 か月に 30 人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した 者及び当該事業主に雇用される被保険者の 3 分の 1 を超える者が離職したため離職した者
③ 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
④ 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

・【解雇】等により離職
① 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
② 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
③ 賃金(退職手当を除く。)の額の 3 分の 1 を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き 2 か月以上となったこと、又は離職の直前 6 か月の間に 3 月あったこと等により離職した者
④ 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて 85%未満に低下した(又は低下することとなった) ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
⑤ 離職の直前 6 か月間のうちに 3 月連続して 45 時間、1 月で 100 時間又は 2~6 月平均で月 80 時間を超 える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関 から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置 を講じなかったため離職した者
⑥ 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていな いため離職した者
⑦ 期間の定めのある労働契約の更新によリ 3 年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働 契約が更新されないこととなったことにより離職した者
⑧ 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当 該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記⑦に該当する者を除く。)
⑨ 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者
⑩ 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設 けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)
⑪ 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き 3 か月以上となったこと により離職した者
⑫ 事業所の業務が法令に違反したため離職した者
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参考:厚生労働省

上記のように自ら望んで退職したのではなく、”会社都合”でやむを得ず退職した場合には、会社都合退職に分類されます。

自己都合退職と会社都合退職の違いを比較

自己都合退職より会社都合退職の方が、失業保険の条件が優遇されます。
優遇されるポイントは、以下の4つです。

①失業保険給付日数

自己都合退職:90〜150日
会社都合退職:90〜330日

②失業保険支給開始タイミング

自己都合退職:受給資格決定から7日+2か月後
会社都合退職:受給資格決定から7日後

③受給に必要な雇用保険への加入期間

自己都合退職:過去2年間で12か月以上
会社都合退職:過去1年間で6か月以上

④再就職手当の対象となる再就職のタイミング

自己都合退職:受給資格決定から7日+1か月後以降
会社都合退職:受給資格決定から7日後以降
※2024年2月時点

この中でも大きいのは、②失業保険の支給開始タイミングです。
失業手当を受給するためにはまず、会社から届いた離職票をハローワークに提出する必要がありますが、自己都合退職の場合は2か月の給付制限期間を待ってからの支給開始となります。
しかし会社都合退職であれば、受給資格決定の7日後には支給が開始されるので、この点で自己都合退職とは大きな差があります。

また失業保険以外にも、会社都合退職の場合は【国民健康保険料の支払いが最大2年間軽減される】というメリットもあります。

退職後は収入がなくなり、国民健康保険料の支払いもかなり痛手となると思いますので、軽減を希望の際は市区町村の窓口に相談しましょう。

自己都合退職と会社都合退職のメリット・デメリット

実際は会社都合の退職であっても、上司から自己都合退職を促されたケースなど、トラブルを避けたいからと自己都合で処理してしまいたくなるかもしれません。

しかし、自己都合と会社都合の退職ではそれぞれメリットとデメリットがあることを把握しておく必要があります。

自己都合退職のメリット

会社都合の退職では、履歴書に「会社都合により退職」と記載する必要があり、再就職のための面接で詳しく事情を聞かれるケースがあります。なぜなら、会社に大きな損失を与えて解雇された場合も会社都合退職となるためです。

自己都合で退職する場合は退職理由を「一身上の都合」とできるので、再就職のための面接で「キャリアアップのため」などポジティブな理由に言い換えられます。ただし、自己都合退職でも転職回数が多い場合は退職理由を深掘りされる可能性もあるので注意しましょう。

自己都合退職のデメリット

失業保険では、自己都合退職だと7日間の待機期間に加えて、約2〜3カ月の給付制限があり、会社都合より受給までの期間が長くなることがデメリットです。また、受給日数も会社都合による退職の場合より短くなる傾向にあります。

さらに、自己都合での退職は退職金を減額する会社もあるため、離職前に会社規定を確認し、退職手当の支給条件を確認しておくことが重要です。

会社都合退職のメリット

自己都合退職と比較し、会社都合の場合は失業保険を早く、かつ長く受け取れることがメリットです。また、解雇する日の30日前までに事前通知なく解雇された場合、解雇予告手当を受け取れる可能性があります。

会社都合退職の場合は7日間の待機期間は自己都合退職と同様ですが、給付制限なく待機期間の翌日から失業保険が支給されます。また受給日数は最大で330日となっており、自己都合退職の最大150日の2倍以上です。

会社都合退職のデメリット

会社都合だと失業保険の受給条件が自己都合の場合より良くなりますが、一方で転職活動に不利になる可能性があることがデメリットです。

転職活動を行う際は、履歴書に「会社都合による退職」や「一身上の都合により退職」と記入するのが通例です。
しかし、 「会社都合による退職」の記載があると、応募先の企業は「何かトラブルがあって解雇されたのではないか」と退職理由について詳しい説明を求めるケースがあります。
もちろん、”会社の倒産”や”経営不振”など、自分に何の落ち度も無い場合には、その旨を正直に伝えるとよいでしょう。

会社都合で辞める方法

自己都合で退職しても一定の条件を満たせば失業保険はもらえますが、受給日数が短くなるなどデメリットもあります。会社都合による離職にもかかわらず、「自己都合」として退職するよう促された場合は注意が必要です。

ここでは、会社都合で会社を辞める方法を解説します。

会社側と交渉する

自分に落ち度がないにもかかわらず、会社から「退職届を書くように」と言われたら、まずは会社に対して会社都合退職にしてもらえるように交渉しましょう。会社都合退職の場合は退職届を提出する必要はなく、万一書いてしまうと自己都合とみなされる可能性があるため注意が必要です、

解雇による退職の場合、会社から解雇通知書や解雇予告通知書、解雇理由証明書など会社都合の退職である証拠の書類を受け取れます。これらの書類は会社に請求しないともらえないケースもあるため、強く要望して希望をしっかり伝えることが重要です。

「会社都合にしてほしい」という意向があるなら、正直に伝えて配慮を求めましょう。

労働問題の責任について言及する

会社がすんなり会社都合であることを認めず、交渉することになったら労働問題の責任について言及しましょう。自ら退職を願い出たとしても、辞めざるを得ない状況であれば会社都合の退職として扱うべきケースがあります。

入社後に労働条件が労働者の不利益になるよう変更したり、ハラスメントがあったりして退職したい場合は、交渉することで会社に問題を認めてもらう必要があります。問題を指摘し、責任追及することで、会社都合退職にしてもらえるよう粘り強く交渉しましょう。

会社都合とすべき証拠を集める

そもそも、労働者の不利益になるような労働環境の会社は、いくら口頭で労働問題の責任を追求しても取り合ってくれない可能性もあります。そのため、会社都合として扱うべきと判断してもらえるように、実際の状況を証拠として集めておきましょう。

証拠の例として、長時間の残業を記録しているタイムカードや退職を促されたメールなどの書面、ハラスメントの録音など、社内の違法行為を客観的に示すものが一般的です。

自主的な退職だったとしても辞めざるを得ない状況の証拠があれば、会社との交渉を有利に進められ、自己都合退職から会社都合への変更も争いやすくなります。

自己都合退職でも失業保険をすぐもらう方法

自己都合退職の場合、初回の手当てが支給されるまでにかなりの時間を要します。
「こんなに待たないといけないのなら、失業保険は諦めよう・・・」
そう思う人も多いかと思いますが、実は自己都合退職でも給付制限なしで失業手当を受け取れる事があるんです!

特定理由離職者に当てはまる場合

【特定理由離職者】を簡単に説明すると、契約更新を希望したのに更新されなかった場合や、妊娠・出産・育児・家族の介護・病気などのやむを得ない事情で退職した人の事を指します。
詳細は以下に記載しますので、まずは自分が当てはまるかどうか確認してみましょう。

・期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がな いことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該 更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)(上記「特定受 給資格者の範囲」のⅡの⑦又は⑧に該当する場合を除く。)

・以下の正当な理由のある自己都合により離職した者
① 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
② 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第 20 条第 1 項の受給期間延長措置を受けた者
③ 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合 又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭 の事情が急変したことにより離職した者
④ 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
⑤ 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者 ⅰ) 結婚に伴う住所の変更 ⅱ) 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼 ⅲ) 事業所の通勤困難な地への移転 ⅳ) 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと ⅴ) 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等 ⅵ) 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避 ⅶ) 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
⑥ その他、上記「特定受給資格者の範囲」のⅡの⑩に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者 の募集に応じて離職した者等
参考:厚生労働省

必要書類をハローワークに提出し、ハローワークが「特定理由離職者である」と認めた場合は給付制限が免除されます。

自己都合退職を会社都合退職に変更した場合

会社都合退職は労働者にとっては大きなデメリットはありませんが、会社にとってはデメリットとなるケースもある為、本来は会社都合退職となり得る場合でも自己都合退職と処理されてしまうケースも少なくありません。

「給与を支払ってもらえない為、退職する事にした。」
「あまりにも残業が多く、入社当時に聞いていた話と違うので退職する事にした。」

こういった場合でも、”自分から退職を申し出たから”という理由で、自己都合退職と離職票に記載されてしまう事があります。
こういった場合、会社都合退職に変更できるケースがあります。
それは上記で説明した、”会社都合退職の理由”に自身の退職理由が当てはまることを証明できる場合です。

それを証明するためには、雇用契約書や就業規則、給与明細、勤怠状況の確認ができるもの(タイムカード)、ボイスレコーダー、メールなどの証拠が必要となります。

手続きの流れは以下の通りです。

①離職票-2の【⑦離職理由欄】の離職者記入欄で、自身が該当すると思われる離職理由にチェックをいれ、具体的事情記載欄(離職者用)に詳細を記入する
②離職票-2の【⑯離職者本人の判断】の欄の【異議有り】に印をつける
③証拠となるものと離職票をハローワークに提出する

その後ハローワークが調査を行い、異議が正当だと認められれば、無事会社都合退職に変更されます。

職業訓練を受講する場合

雇用保険制度の一環として、職業訓練(ハロートレーニング)という制度があります。
失業保険を受け取りながら通うことができ、たとえ受講途中で所定給付日数が終了したとしても、失業保険の支給は訓練終了まで(最長2年)延長されます。
また給付制限中に職業訓練の受講を始めた場合は、給付制限が訓練開始日前日で解除されますので、実質給付制限をなくす事ができる可能性があります。

自己都合から会社都合に変更するには

会社都合の退職なのに退職届を書くよう促されたり、離職票の退職理由に「自己都合」と記載されていたり、自己都合扱いされた場合でも会社都合の退職に変更できる可能性があります。

自己都合から会社都合の退職に変更する方法を解説します。

自己都合を示す証拠を残さないよう注意する

自ら退職届を書いて提出してしまうと、本来は会社都合であっても自己都合退職と扱われてしまいます。上司に強く退職を迫られると「退職届を出してしまったほうが楽かも」と思うかもしれませんが、不当な自己都合扱いを避けるため、退職届など自己都合退職の意思がある証拠を残さないように注意しましょう。

また、会社が提示する退職合意書や退職届には退職理由を「自己都合」と記載しているケースもあります。必ずサインする前にすべての文章を読んで、事実と異なる部分がないか確認が必要です。

会社に対して会社都合である証拠を示す

強く退職を促され、自己都合として退職せざるを得ない状況でも、会社都合であることの証拠を集めておくことで、会社側に退職理由の再考を要求できるケースもあります。

退職を推奨するケースは会社都合退職の典型例なので、退職を促された書面やメール、録音などを証拠として残しておくと効果的です。

離職票に会社都合と記載されていることを確認する

失業保険の申請に必要な離職票の発行は、勤めていた会社の協力が必要です。離職票の発行を希望する場合、会社が離職者証明書に退職理由など必要事項を記載してハローワークへ提出し、発行された離職票が会社経由で退職者の手元に届きます。

そのため、会社都合退職であっても離職票を発行する際、会社が退職理由欄に「自己都合」と書くと自己都合退職として扱われてしまいます。不当に自己都合とされていた場合は、会社と事実関係を争うことが必要です。

万が一、離職票に正しい退職理由と異なる記載があった場合は署名欄へのサインは必ず拒否しましょう。

ハローワークで異議申立て手続きする

離職票の退職理由が会社都合なのに自己都合になっていた場合、会社都合退職への最終手段としてハローワークでの異議申し立て手続きを行います。

会社都合での退職に変更したい場合、誤った退職理由が記載された離職票をそのままハローワークへ提出しないようにしましょう。

まずは、自己都合退職に納得できないことをハローワークに相談し、会社都合に該当するか調査してもらう必要があります。異議申し立てをする際は、会社都合退職である客観的な証拠を提出することで、審査で適切に判断してもらえる可能性が高まるでしょう。審査に通ると、退職理由を会社都合に変更して再発行された離職票を受け取れます。

自己都合退職した人が再就職手当を受け取る方法

再就職手当とは、失業保険受給中の方に対して早期の再就職を促進するための制度で、簡単にお伝えすると”再就職が決まったら貰えるお祝い金”のようなものです。

再就職手当を受け取る条件

①待期期間終了後に就職する事
 失業手当の申請をした日から7日間が待期期間です。

②基本手当が3分の1以上残っている事

③離職前の会社と関わりのない企業に就職する事
 全く同じ会社への再就職はもちろん、関連会社などに再就職した場合も対象外となります。

④(給付制限がある場合)待期期間満了後、1か月以上経過してから就職する事
 待期期間満了後1か月以内でも、ハローワークや職業紹介事業者の紹介した企業に就職すれば対象となる可能性があります。
ただし紹介状を出してもらう事が必須となるため、例えば【ハローワークの求人検索パソコンを見て、自ら応募した】などは対象外となります。

⑤1年を超えて勤務する事が確実である事
 【6か月契約の派遣社員等で、更新の予定がない場合】や【1年以下の雇用期間で、契約の更新にあたって一定の目標達成が条件付けられている場合(保険会社など)】は対象外となります。

⑥再就職先で雇用保険の被保険者になっている事
 再就職後も雇用保険に入れる場合に対象となります。

⑦過去3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当を受けたことがない事
 常用就職支度手当については、こちらをご確認ください。参考:厚生労働省

⑧受給資格決定(求職申込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでない事
 失業手当の申請日より前から内定が出ている場合は、再就職手当の対象にはなりません。
その為在職中から次の会社の内定が出ている場合なども対象外となります。
参考:ハローワーク

再就職手当の給付額

再就職手当の金額は、再就職の時点で失業保険がどれだけ残っているかで決まります。

失業保険を3分の1以上残して再就職した場合→受け取らなかった失業手当の60%
失業保険を3分の2以上残して再就職した場合→受け取らなかった失業手当の70%
参考:ハローワーク(再就職手当以外の就職促進給付についてはこちらからご確認いただけます)

再就職手当の給付日数

再就職手当は失業保険とは異なり、一括で手当金を受け取る事ができます。
例えば失業保険の所定給付日数が90日で給付日額が5,000円の方が、失業保険を10日分だけ受け取って再就職した場合、残りの80日分×5,000円の70%で280,000円を一括で受け取れる事になります。

失業手当の計算方法

自分がどのくらいの失業手当をもらえるのか、それによって失業手当の受給をあきらめ、すぐに再就職を選択する方もいるでしょう。

失業手当は自己都合退職・会社都合退職問わず、【離職日の直前6か月間に支払われた賃金】をもとに算出されます。
詳しい計算式は下記の通りです。

① 離職日の直前6か月間に支払われた賃金の1日当たりの金額(=賃金日額)を算出する

【離職前6ヶ月間に支払われた給与の合計※÷180日】
※残業代や通勤手当、役職手当、住宅手当などの各種手当含む
 賞与(ボーナス)や退職金は含まない

ただし賃金日額には上限と下限が定められている為、上記の計算式で求めた金額が上限額を上回る際には上限額を、下限額を下回る際には下限額を賃金日額とします。

離職時の年齢 上限 下限
29歳以下 13,890円 2,746円
30~44歳 15,430円
45~59歳 16,980円
60~64歳 16,210円

 

② ①で求めた賃金日額に、下記のパーセンテージをかけて基本手当日額を算出する

賃金日額 給付率
5,110円以下 80%
5,111円以上 12,580円未満 80~50% ※1
12,581円以上 50% ※2

※1 離職時の年齢が60〜64歳の場合は80〜45%
※2 離職時の年齢が60〜64歳の場合は45%

こちらも同じく上限と下限がある為、上限額を上回る際には上限額を、下限額を下回る際には下限額を基本手当日額とします。

離職時の年齢 上限 下限
29歳以下 6,945円 2,196円
30~44歳 7,595円
45~59歳 8,355円
60~64歳 7,177円

参考:厚生労働省

③ 基本手当日額に給付日数をかける

失業保険の計算式はかなり複雑なため、おおよその受給金額を計算してくれるサイトなどを使って、自分がいくら受け取れるのか確認してみるのもよいでしょう。

失業保険を受給するまでの流れ

失業保険を受給するまでの流れも、自己都合退職と会社都合退職では異なります。
ざっくりお伝えすると、会社都合退職の場合は退職日から初回の手当が振り込まれるまで【1~2か月】かかるのに対し、自己都合退職の場合は【約4か月】はかかってくるのです。

失業保険受給までの流れは以下の図でご確認ください。

参考:厚生労働省

失業保険を申請する際に必要となる物

失業保険を申請する際は住所を管轄するハローワークに足を運ぶ必要があります。
退職後に会社から離職票が届くまで数日かかりますので、その間にしっかり準備しておきましょう。
◆持ち物
・雇用保険被保険者離職票(-1、2)
・個人番号確認書類(いずれか1種類)
マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
・身元(実在)確認書類((1)のうちいずれか1種類((1)の書類をお持ちでない方は、(2)のうち異なる2種類(コピー不可))
(1)運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など
(2)公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など
・写真(最近の写真、正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm)2枚
・本人名義の預金通帳又はキャッシュカード(一部指定できない金融機関があります。ゆうちょ銀行は可能です。)
参考:ハローワーク

失業保険についてのよくある質問

失業保険受給中はアルバイトしてもいいの?

「失業保険だけでは生活していけないから、アルバイトをしながら失業保険を受給したい!」
そう考える方も多いかと思います。
失業保険受給中にアルバイトをする事は可能ですが、必ず以下の条件を満たす必要があります。

①待機期間の7日間はアルバイトをしない
 失業保険の申請をした日(=受給資格決定日)から7日間は、【待期期間】という失業している事を証明する期間となります。
その為その期間にアルバイトをしてしまうと再就職したとみなされ、失業保険が申請できなくなってしまいます。

②週20時間以上、または31日以上雇用される見込みの職場では働かない
 週20時間以上、もしくは31日以上雇用が見込まれる職場で働く場合、雇用保険に加入する必要があります。
雇用保険に加入するともちろん再就職したとみなされる為、失業保険の支給が停止してしまいます。
その為アルバイトをする場合は、単発や短期のアルバイトを探すとよいでしょう。

③失業認定日には、アルバイトした事実をハローワークに報告する
 失業保険受給中は定期的にハローワークに行き、【失業認定申告書】を提出する必要があります。
失業認定申告書には就労した日を記入する項目があるので、正直に報告しましょう。
失業認定申告書の書き方はハローワークの窓口の方が教えてくれるのでご安心ください。

一日4時間以上働いた日の分の失業保険は受給が先送りになる為、アルバイトした事実を隠す人もいるようです。
しかし不正受給となると手当の支給が停止されるのはもちろん、今までに受給した手当の返還や、不正受給した金額の3倍の金額の納付を求められる事もありますので絶対に辞めましょう。

失業保険受給中は扶養に入れるの?

失業保険受給中は収入が少ない為、扶養に入ろうと考える人もいるでしょう。
扶養に入れるかは収入で判断されますので、給付制限の2か月間の期間は収入がない為扶養に入る事ができます。
また扶養認定申請の際には、雇用保険受給資格者証の写しを提出する必要があります。

しかし失業保険の給付が開始された後は、基本手当日額が3,612円以上の場合は扶養に入る事はできません。
基本手当日額が上記の金額を超えている場合は、給付制限が終わり次第扶養から抜ける必要があります。

その他のよくある質問は、厚生労働省のHPからご確認いただけます。

まとめ

離職票を受け取ったら、必ず自分が【自己都合退職】【会社都合退職】のどちらになっているか 確認をしましょう。

会社都合退職には大きなメリットがある為、退職理由に不服のある場合はハローワークに相談してみましょう。
それによって退職後の生活が大きく変わる事もあるのです。

また退職後に受け取れる給付金は、失業保険だけではありません。
失業保険は雇用保険の給付金ですが、実は社会保険にも給付金があるのはご存じですか?

社会保険の給付金と失業保険を組み合わせる事で、最大28か月間も給付金を受け取れる可能性があるので、失業保険の申請をする前に、ぜひ無料のWEB説明会に参加してみてくださいね。

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