2024.10.30

給付金について

会社が傷病手当金を嫌がる3つの理由!申請方法や対処法も紹介

業務外の病気やケガを理由に、働けなくなった場合、被保険者であれば傷病手当金の申請が可能です。しかし、会社に申請した際に嫌がられたり、拒否されたりするケースがあります。

傷病手当金の申請は、被保険者の権利です。本記事では、傷病手当金申請の際に会社が嫌がる理由と対処法、具体的な申請方法についてわかりやすく解説します。

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傷病手当金とは

傷病手当金とは、健康保険に加入している被保険者の生活を保障するために支払われる手当です。支給条件と支給期間、計算方法について解説します。

傷病手当金の支給条件

傷病手当金の支給条件は、下記のとおりです。

健康保険に加入している被保険者であること
業務外の病気やけがにより、療養中であること
仕事を3日間連続して休んでいること
給与が支払われていないこと

業務上、通勤途中でのけがは、傷病手当金ではなく、労働災害保険の給付対象です。また、傷病手当金は、3日間の欠勤を待機期間とみなし、4日目から支給されます。土日・祝日や有給は、待機期間に含まれるため、計算時には注意しましょう。

給与の一部のみが支払われている場合は、傷病手当金から給与分が減額されます。

傷病手当金の支給期間と計算方法

傷病手当金の支給期間は、最長1年6か月です。令和2年7月1日以降は、支給を開始した日から通算します。ただし、次の期間は通算に含まれません。 

・賃金が会社から支払われていて、不支給になった期間
・老齢年金や障害年金を受給して、不支給になった期間
・出産手当金を受給して、不支給になった期間

参考:全国健康保険協会

最初に傷病手当金が支給された日から、直近12か月の平均標準報酬月額を計算します。平均標準報酬月額÷30=標準報酬日額です。休業日1日につき、標準報酬日額の3分の2相当額が支給されます。

(例)
標準報酬月額200,000円
待機期間後の休業日数20日
200,000÷30=6,666円
6,666円×2/3×20=88,880円

この場合の支給額は、88,880円です。

傷病手当金の金額ついて詳しく知りたい場合は以下の記事を参考にしてください。
参考:傷病手当金の金額を早見表でチェック!支給額が変わるケースや退職後の扱いも解説

傷病手当金の申請方法

傷病手当金の申請の際には、申請書と書類が必要です。申請書提出後、審査を経て、支給が決定します。スムーズな支給のために、申請手順と申請に必要なものを解説します。

傷病手当金の申請手順

1:医療機関の受診
病気やケガの診断書の取得とともに、医師に申請書の「療養担当者記入用」に記載を依頼します。診断書だけでは、傷病手当金を申請・受給するための証明書としては使えません。

2: 傷病手当金支給申請書に記入
「被保険者記入用」の項目に必要事項を記入します。

3:事業主に記入・証明を依頼
労務に服することができなかった期間(申請期間)の勤務状況および賃金支払い状況等の記入を依頼します。合わせて申請期間中の労務と給与に関する証明を受けます。

上記は、全国健康保険協会(協会けんぽ)の例です。保険組合により申請書の記載内容が多少異なるケースがあります。

また、申請書の提出は、給与計算の締め日以降に行いましょう。

傷病手当金の申請に必要なもの

初回申請に必要な書類は、以下の書類の提出が必要となる可能性があります。

傷病手当金支給申請書
医師による診断書(労務不可の証明)
労務に服することができなかった期間を含む給与計算期間とその期間前 1か月分の給与(賃金)台帳
タイムカードの写し

役員の場合は、タイムカードや給与台帳の代わりに役員報酬を支給しない役員会議議事録の写しを添付します。

傷病手当金支給中に出勤した場合は、傷病手当金請求期間の最終日を含む月の出勤簿や給与台帳の写しなどが必要になります。タイムカード・給与台帳の写しなどの提出が追加で求められるケースもあります。

障害厚生年金受給者や退職後(資格喪失後)に継続給付を受ける場合は、直近の年金額がわかる書類の添付が必要です。

(例)
・年金振込通知書(支払通知書)の写し
・年金額改定通知書の写し

傷病手当金をもらいながら働く方法は可能なのか知りたい場合は以下の記事を参考にしてください。
参考:傷病手当金をもらいながら働く方法はある?収入を得る方法や注意点を解説

会社が傷病手当金を嫌がる3つの理由

会社に傷病手当金の申請を申し出た際に、嫌がられたり、渋い顔をされたりしたという経験を持つ方もいるかもしれません。理由として、制度に対する理解不足による誤解や、事務作業の増加による負担感などが考えられます。

ここでは、会社が傷病手当金の申請を嫌がる主な理由を3つ解説します。

会社が負担しなければならないと勘違いしている

傷病手当金の原資は、労働者が支払っている健康保険料です。会社側には、直接的な金銭的負担はありません。しかし、なかには「会社が負担しなければならない」と勘違いし、コスト削減を理由に傷病手当金の申請を嫌がるケースもあるでしょう。

また、傷病手当金の支給を受ける人が増えると、会社が「負担する保険料が上がるのではないか」と懸念している可能性もあります。

しかし、傷病手当金は健康保険に加入するすべての会社員が、条件を満たせば受けることができる給付金です。会社は従業員から申請書の提出依頼があった場合、正当な理由なく拒否することはできません。

書類作成にかかる手間と時間が煩わしい

傷病手当金の申請手続きには、会社側で必要書類の作成や労務管理など、事務手続きを行う必要があります。人手不足や業務の繁忙期など、会社側の事情によって、こうした事務手続きを負担に感じる場合もあるでしょう。

中には、上司が部下に対して嫌がらせを目的として、傷病手当金申請の手続きを意図的に遅らせたり、拒否したりするケースも考えられます。

しかし、傷病手当金申請の処理は、通常、管理部門や人事部門が行います。上司の個人的な考えや方針で、申請を拒否することはできません。上司から申請を拒否された場合は、後述する相談窓口に相談してみましょう。

どのように書けばよいかわからない

傷病手当金申請書は、医師、被保険者、事業主と、それぞれ記入する欄が異なり、記入項目も多いため、複雑に感じるかもしれません。特に、過去に傷病手当金の申請経験がない企業では、申請手続きに慣れておらず、戸惑うこともあるでしょう。

医師の診断書の期間と、実際に労働者が休んだ期間が一致しない場合などは、手続きがさらに複雑になります。また、会社側の記入ミスや記入漏れなどがあると、申請書を再提出しなければならない可能性もあります。申請書の記入例を参考にしたり、健康保険組合などに相談したりすることで、スムーズに手続きを進められるでしょう。

会社に傷病手当金の申請を断られた際の対処法

会社に傷病手当金の申請を断られた場合に備え、下記3カ所の相談先と具体的な対処法について紹介します。

・社内(上司・人事課など)
・社労士・弁護士
・外部組織や専門団体

社内で相談できる人に掛け合ってみる

傷病手当金に関する基本的な知識を身につけたうえで、上司や人事担当者に、自分の状況や希望を丁寧に説明しましょう。傷病手当金の申請は労働者の権利であること、申請に必要な手続きや書類などを具体的に説明することで、理解を得られる可能性があります。

会社が申請を拒否する理由としては、制度への理解不足や、書類の複雑さに対する不安などが考えられます。こちらから歩み寄り、必要に応じてサポートを申し出ることで、解決できる可能性があります。

社内で解決が難しい場合は、労働組合に相談してみるのも良いでしょう。第三者的な立場から、問題解決の糸口を見つけてくれる可能性があります。

社労士や弁護士に相談してみる

会社側が協力的でない場合は、労働問題や社会保険に精通した社労士(社会保険労務士)に相談してみましょう。社労士は企業側の事情にも精通しているため、傷病手当金の申請に関して、状況に応じた的確なアドバイスを受けることができます。

社労士に相談し、得られた助言を会社側に伝えてみましょう。場合によっては、社労士の名前を出すことで、会社側の対応が変わる可能性もあります。

傷病手当金の申請以外にも、労働問題に関するトラブルを抱えている場合は、弁護士への相談も検討しましょう。弁護士に相談することで、法的な観点から問題解決に向けたアドバイスやサポートを受けられます。また、弁護士が介入することで、会社側もより真剣に対応する可能性が高まり、問題の早期解決につながるケースもあります。

外部の組織や団体に支援してもらう

社労士や弁護士に相談する場合は、費用がかかることがあります。費用を抑えたい場合は、管轄の協会けんぽ支部や自治体の無料相談窓口などに相談してみるのもよいでしょう。

これらの窓口では、専門家からアドバイスを受けることができます。傷病手当金の申請で困ったことがあれば、一人で悩まずに相談してみましょう。

まとめ

会社が傷病手当金の申請を嫌がる理由としては、制度に対する理解不足、事務手続きの煩雑さなどが挙げられます。しかし、傷病手当金の申請は労働者の権利であり、会社側は正当な理由なく拒否することはできません。

会社から申請を拒否されたとしても、諦める必要はありません。傷病手当金の申請は、被保険者の正当な権利です。病気やケガで働けない間の生活費の心配を軽減するためにも、傷病手当金制度を積極的に活用しましょう。

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